理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

平成生まれの基礎研究 その1 2011.06.02

先週に引き続いて、今日も母校の研究室を訪ねた。4年生がこの春から始めた研究発表を行なう日である。といっても本格的なものではなく、ゼミの延長のような初歩的な内容であり、卒業研究に向けて本格始動する前の予備段階としての研究結果発表という位置づけである。

と、私は参加する前まで、そんなこじんまりとした勉強会の延長のような発表だろうと考えていたのだが、平成生まれの4年生は、研究成果をまとめたA4版の梗概(こうがい)をすでに作成しており、発表時間が10分、質問が5分という、一般的な研究発表と、ほぼ同じように進めるらしい。

研究室の学生数は、大学院生が5名、4年生が12名、そしてまだ6月だというのに、研究室への配属がすでに決まっている16名の3年生も加わっていることがわかった。今日は3年生が2人欠席ということだったが、全員が揃えば33名という大所帯の研究室である。

研究課題は、次の通りであった。やはり、震災と津波の影響による一斉の節電対策が大きかったらしく、いずれも電力消費削減についての実験と、その考察であった。

1. 冷蔵庫の使用方法について ー断熱性を求めるまでー
2. 電気ポットの機能実験
3. 炊飯器の電力消費量計測実験
4. パソコンにかかる投入電力についての考察

この標題から、いずれも学生の地味な研究だと決して侮ってはならない。普段、知り得ることのない、興味深い結果が得られるだけでなく、そこに新たな知見さえ隠されているのである。ここで紹介する結果は、彼らの取り組みのごく一部分であり、残念ながら、私の理解力のなさもあって、そのすべてを伝えきれるものではないことだけは先に伝えておきたいと思う。

例えば、1.の冷蔵庫の研究では、内側にアルミ箔を貼った場合、その消費電力については、何もしない普通の状態と変わらないが、冷蔵庫内の温度はより下がるという結果が得られている。また、アルミ箔を貼った方が、庫内の温度低下の速度が大きいこともわかった。アルミ箔そのものには断熱性能はないが、冷たい庫内側に貼ることで、冷却効果を高められる効果が示された。

次に、2.の電気ポットの機能実験では、基礎段階の考察として、ポットそのものをアルミ箔で包んでしまうという実験を試みている。この結果では、ポット全体をアルミ箔で覆っても、通常の何もない状態での電力消費量と変わらないことがわかった。つまり、上述の冷蔵庫と比較して考えると、冷たい部分や熱い部分が内側にある電気機器の消費電力を抑えるためには、その外側ではなく、内側に何らかの対策を施す必要があることがわかる。

« »