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友人の新居と住文化 その1 2011.06.12

三連休の中日となった日曜に、先月、ケルン市内で引越をした友人の新居を訪ねた。ケルンで5回目の引越らしい。場所は郊外だが、市内中心部から地下鉄で約10駅だから、やけに遠いというわけではない。自転車が壊れてしまってから、歩くか、公共交通機関を使うしかないので、友人宅まではバスと地下鉄を乗り継いで行った。30分程かかっただろうか。最寄駅で降りて、そこから歩いて10分ほどである。途中に、キオスクがあったので、そこでビールを2本買った。友人宅の場所は、あらかじめ地図を頭に入れて行ったので問題なく到着した。

市内から少し離れているとはいえ、いまは周りにも適度な密度で集合住宅が建っているが、建設された当時は、おそらくこの地区には何もなかったに違いない。ただ近くに、1920年代に開発された集合住宅が数多くあるので、おそらくその流れを組んで、戦後の住居不足の頃に一気に建てられたのだろう。ここは緑も多く、隣棟間の距離も適度に取られているから、市内のような住居密度も高くないし、いずれの建物も3階から4階建てのため、圧迫感はまったくない。長く住んでいる人が多いのか、通る人にバルコニーから声をかける姿も見える。

友人の新居は、そんな一角にある3階建てのそれほど大きくはない集合住宅の一室だった。共用玄関の上には、板金のような波板が簡易に張出しているだけなのだが、不思議と安っぽさを感じない。その共用玄関に入ると、床の仕上げや手摺が目に留まる。友人に訊くまではわからなかったが、1950年代に建てられたらしい。当時は、所得の低い人たちのための住宅で、その後、民間に払い下げになったようだ。でも、こういった共用部のしつらえは実にしっかりしているし、つくりも丁寧な感じを受ける。特に手摺の曲線が美しい。

最上階の3階にある友人宅はそれほど大きくはないし、築50年だから新しくもないが、不思議と古さを感じさせないのである。もちろん内部は何度か改修されて来ていることもその理由の一つだと思うが、何と言うのだろうか、落ち着いた雰囲気を持っている。入口を入ると、そこが中央廊下になっており、すぐ左側に洗面浴室がある。廊下を進むと、やはり左側に台所があり、右側が居間である。つまり、台所と居間は廊下を隔てて離れて配置されている。日本であれば、廊下から一旦居間に入って、そこから台所に行けるようにするはずだ。

居間の広さは、幅5m、奥行も5m程度だろうか。南向きの窓は、部屋の幅と同じだけ取られており、いわゆる腰壁のある横連窓になっている。その一角からバルコニーに出られるようになっている。最近の集合住宅は、バルコニーを外壁から張出させることが多いが、この住居のバルコニーは外壁面から奥に配置されており、庇の深い屋根がかかっているから、落ち着き感のあるバルコニーに仕上がっているし、弱い雨であれば吹き込んで来ることもない。しかも台所と窓を隔ててつながっているから、その窓を開けるだけで食事をバルコニーに出すことができる。

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