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還流独歩

駐車場争奪戦 その2 2011.06.16

ケルン市内は、ともかく一方通行が多いので、その道に戻ろうとしても、気が遠くなるくらい遠回りをしなけばならない。やっとのことで戻って、入れ損ねた駐車場まで再び50mのところまでやってき来た私の前に、その先の角から一台の車が静かに入って来た。「まずい」。嫌な予感は的中した。案の定、その車は私が狙っていたところに、何の問題もなく奇麗におさまってしまったのである。マーフィーの法則というのがあるが、まさにその通りだ。車は便利だが、駐車場がないと停められないという実に不便な機械である。

そのあとも、駐車場を探して住宅街を走り回る。本当に情けない。駐車場を探すだけなのに、やるせない気持がわき上がり、それがなんとも消化できないのである。実に嘆かわしい。もう諦めて、家から離れてもいいから、遠くに停めようかと思ったのだが、明日の行き先を事前にナビゲーションシステムに入れておいた方が良いと考えた私は、先程、入り損ねた駐車場のある手前で止って、住所を入力しつつ、気分を落ち着かせながら、その間にどこか空くのを待つという戦法を思いついた。そして、それに賭けてみることにした。

人間は、諦めると気分が軽くなるものである。何の期待もせず、まずはナビゲーションの使い方にでも慣れておくか、と思いながら、因縁の通りの手前まで来て車を路肩に止めようとしたら、その先に2台分が空いているではないか。不思議なもので、力が入っているときにはうまく行かないことも、肩の力を抜いて、過度な期待をしないでいると、ものごとは案外うまく行くという典型かもしれない。この場合、「押してもだめなら引いてみな」という諺は当てはまらないのかもしれないが、でも、何だかそんな感じがしないでもない。

ともかく、車は自宅から150mのところに停めることができ、今日の駐車場争奪戦は終わった。そして目的地もすべて入力し終えることができたので、明日はそのまま出発できる状態になった。素晴らしい。駐車場探しで一喜一憂などしているのは、実に馬鹿らしくも思えるのだが、不思議なもので、車というのは人間をわがままにさせてしまうようだ。それにしても、路上駐車している車の数には改めて驚いてしまう。便利な移動手段なのに、停まっているときには実に場所を取ってしまう大きな工業製品であることを実感してしまう。

自動車大国のドイツだが、毎日こんな風に駐車場を探し回らなければならない現実がある。人口の多い都市部での駐車場問題は、かなり深刻ではないかと思うのである。

追伸:翌日、出発する前に走行距離を確認したら13kmであった。借りてから駐車場を見つけるまで、10km以上も走ってしまったのである。

加筆訂正:2011年6月26日(日)

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