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還流独歩

建築現場視察 その1 2011.06.17

昨日のことだが、フランクフルトまで車で出かけ、日本から来られた方と建築現場を二つ視察する機会を頂いた。どちらの建築も、断熱材の使われ方について、建設中の現場で実際に確認するのが目的である。ケルンからフランクフルトまでは、約180kmである。だいたい2時間くらいだろうか。待合せは9時だったが、渋滞も考慮しなければならないし、何かの事故でアウトバーンが通行止めになるという可能性もないとはいえないので、早めに出発した。こういうときは、一旦、遅れてしまうと、それを取り戻そうとして、どうしても気が急いてしまうので、早めの行動が求められる。

一つ目の視察先は、フランクフルトから、さらに東へ50kmほど離れた田舎の住宅現場である。ナビゲーションが示す通りに向かうと、家も何もない山道に入ったが、その先に住宅街が広がっていて安心した。建築現場は、すぐに見つかった。外壁の外側に木質系の断熱材を施しているが、遠目に見ると外装材のようにも見えて奇麗である。傾斜地に建つこの住宅は、半地下部分が組積造で、上階は木造のようである。あいにく現場には誰も作業をしておらず、内部を見ることはできなかったのが残念だが、外断熱の施工状況を実際に確認できたのは良い機会となった。

二つ目は、そこからフランクフルト方面に40kmほど戻った街の中にある、城の修復現場であった。その改修を手がけているという建築家に連絡を取り、現場を案内してもらった。すぐ行くと言いながら、約束の時間から30分以上も遅れて来るのは、ドイツでは実にありがちなことだ。気温が高く、蒸し暑い外気に触れながら、のんびりと待った。この物件は、すぐ隣りにある大きな城ができる前に、教会の付随施設として建てられたもので、完成したのは1550年だという。建物としては、それほど大きくないが、増築を重ねるうちに、全体がU字型をした平面構成になったそうだ。

保存建築として認められたこの建物は、いろいろな経緯から、現在は個人所有になったようで、建築主の要望で、内部を9つの住居に改修するという。その全部を案内してもらった。壁の下塗りは終わっており、放射温水暖房器や浴槽などの設置も終わっているが、工事が完了するまでは、最低でも、あと半年以上はかかりそうに見える。住居の形態も、上下階に別れていない一層のものもあれば、屋根裏部屋を利用したメゾネットのような空間構成のものもある。建築主の話によれば、9住戸のうち3つは、すでに入居者が決まっており、ほかの4物件にも引き合いがあると言う。

ところで、この建物は保存建築に指定されているので、外観の変更はできない。そのため、断熱材は内側に施されている。その厚さは、南側で約18cm、北側で24cm程度としている。その理由は訊き漏らしたが、石造だから壁厚も大きく、また住戸単位で外壁の方角が異なるからではないかと思う。ここでも木質系の断熱材が使われているが、それは自然素材を使うことによる室内環境へ配慮と、湿気の問題、それから防音効果も兼ね備えているからだという。建築主も建築家も自然素材を使うことへの意識は高く、まさにいま、それが自然の流れになっているように思われる。

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