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シエラレオネへの旅立ち 2011.06.23

5年程前まで、3年近く共同生活をしていた友人女性が会社を3か月ほど休職して、アフリカのシエラレオネに行くという。私はドイツ人の男性と、今回、アフリカに行くことになったその女性と一緒に、3人で生活をしていたことがあった。ドイツ語で通称、WG/ヴェーゲーと呼ばれるヴォーンゲマインシャフトは、一つの住居を何人かと共有することある。これは70年代以降、ドイツ社会に幅広く浸透しているし、最近では日本でも少しずつ広まって来ているようだ。

シエラレオネに行くという友人女性は、学生のときにアンゴラに行ったり、ポルトガルへ留学したりしていたし、最近は仕事でメキシコやチベット、南アフリカなどにも出かけている。この夏に、会社を離れてシエラレオネに行くという話も、今年の3月くらいには聞いていた。出発まであと一週間となり、歓送会を開くというので、参加することにした。雨上がりの夕方に、予約を入れてあるというお店に行く。最初は数名で始まったが、最後には10数名近くになった。

肝心のシエラレオネだが、象牙海岸の西側に位置する国である。恥ずかしながら、私はそれしか知らない。首都がフリータウン/Freetownということも今回、初めて知った。調べてみたらイギリスの植民地だった。公用語も英語である。その港に病院船があり、彼女は夏の三か月間、そこで働くという。いまの仕事は休職扱いで、往復の航空券は会社が支払ってくれるが、その間の給料はもらえず、また現地での作業も無給らしい。

彼女は、いまの会社に勤めて7年くらいになるだろうか。年に数回しか会わないが、以前から、会社を辞めたいようなことを言っていた。もちろん本気ではなかったようだが、自分の置かれている環境を変えてみたいということは何度か聞いていた。シエラレオネの病院船での仕事は、最初テレビか何かで知って、そのあと新聞にも掲載されたという。思い立ったら吉日だ。会社の上司を説得し、休職を取付けた。どちらの決断も素敵なことだと思う。

現地の船には、バックパッカー用の大きなリュックザックだけが持ち込み可能で、スーツケースのような大きな荷物は、場所の問題があって禁止だという。部屋は6人か10人部屋だそうで、そこには専用のロッカーとベッドしかないらしい。看護師として働くことはできないから、雑務のような作業をすることになるという。労働時間は週45時間と決まっているとも聞いた。休日は、どのように取れるかは現地へ行ってみないとわからないという。

いつだったか日本からお土産として持って来た扇子があったので、それを彼女に渡した。アフリカは暑いとはいえ、船の中はある程度は空調が完備されているようだし、外は逆に猛暑だろうから、扇子が役立つ機会はないかもしれないが、何かの折に使ってもらえることもあるだろう。他の友人は、頭につけて前方を照らすライトや、万が一のとき以外、開けてはならないという小さな救急箱などを渡していた。みんないろいろと考えるものだ。

誰かが煙草を吸いに席を立ったり、お手洗いに行くたびに席が入れ替り、最後は飲みながらの立ち話しのような状況になった。全員の飲み代は、すべて彼女が払ってくれるという。出発を一週間後に控え、部屋も引き払い、3か月とはいえ、自分を再起動する時間が近づいていることに、彼女が喜びを感じているようにも見えるのが、逆に私にとっても嬉しかった。

現地の様子を、時折メールで伝えてくれるというから楽しみにしておこう。そしてドイツへの無事の帰国を願っている。

▶ MercyShips:右下「Interaktives Photo」参照

加筆訂正:2011年9月10日(土)/11月16日(水)

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