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冷蔵庫の断熱性と建築 その1 2011.07.05

以前にも書いたが、改めて冷蔵庫について触れてみたい。仮に、大きさも内容量もデザインも仕様もまったく同じで、断熱性だけが違う冷蔵庫が売られているとする。一つは断熱性に非常に優れていて、もう一つは、あまり良くないとしよう。その違いを事前に聞かされてから購入するとしたら、どちらを選ぶだろうか。

そんなことは訊くまでもないはずだ。好んで断熱性の悪い冷蔵庫を買う人は、おそらくいないだろう。ほとんど誰もが断熱性の良い冷蔵庫を求めるに違いない。その理由を問えば、断熱がしっかりしている方が、電気代がかからないからと考えるかもしれないし、あるいは良く冷えるとか、冷たさが長持ちすると言う人もいる可能性もある。

他の事例を挙げると、夏の暑い時期に、冷やした飲み物や氷を運ぶときにはどうすべきだろか。そのまま手に持って歩けば、すぐに温くなるし、氷が融けてしまうことは想像に難くない。それを防ぐためには、保冷箱に入れて運ぶのが望ましいだろう。何か厚いタオルのようなものを巻いて空気に触れないようにするのも効果があると思われる。

では、建物の場合はどうだろうか。断熱性の良い住宅と、断熱性の良くない住宅があるとしたら、どちらを選ぶべきだろう。難しいことを考えなくても、答えは冷蔵庫の場合と同じだと思う。建築はものを冷やすことを目的につくられたものではないが、冷暖房費が抑えられるのは、断熱性が高い建物の方であることくらいは一般の人でも気がつくと思う。

にもかかわらず、断熱の重要性については、まだ軽視されている嫌いはないだろうか。断熱にお金をかけるくらいなら、内装や水廻りの仕様を充実させたいと考える人は決して少なくないようだ。その気持もわからなくはない。その一方で、むしろ断熱に対する関心が高まってきており、それをないがしろにすることなど考えられないという人も増えて来ている。

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