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還流独歩

写真家との夕べ 2011.07.20

ケルン在住の写真家に誘われて、歩いて10分ほどのところにある教会で始まった「fukushima」という芸術展示を一緒に見に行った。日本の芸術家が6名、4名がベルリンから、そしてケルン在住の9名による「福島」を題材にした作品が、教会の入口と鐘楼の中に展示されている。それらを一つ一つ解説することはできないが、それぞれが「fukushima」について考えさせられる内容になっており、個人的には教会の入口に展示された津波による災害を表現した作品が印象的であった。核といったことに関して敏感な人が多いドイツだから、鐘楼の狭い階段を行き来するのが難しいくらい人が集まって来ている。

そのあと、誘ってくれた友人の写真家と夕食を食べに出かけた。以前にも書いたかもしれないが、彼と知り合ったのは、もう10年近く前になる。彼が出版した写真集の中の文章を日本語に訳す仕事を頂いてからだ。いろいろな経緯から、その翻訳は写真集に掲載されることはなかったけれど、それでも私にとっては貴重な機会になり、それ以来、ことあるごとに会う機会をつくって来た。前回会ったのは、4月の彼の誕生日のお祝いの会の場だったと思う。食事の前に、それぞれビールとワインを飲みながら、彼がつい最近、総勢30名以上の芸術家と一緒に出版した「FREIO #3」という本の話や、誕生日のお祝いをしたお店の内観写真について語った。

外のテラス席は時間が経つにつれて少しずつ寒くなって来た。7月に入ってから不順な天候が続いており、雨も多く、涼しい日が続いているが、長袖の上に春物の上着を着ていれば、今日はまだ外で食事ができる気温だ。写真家の彼とは、過去のことや、将来についての話をした。私も不思議な縁でドイツに来て、いまも両国を行き来する生活を続けているから、それをさらに活かせるような活動の方向性についても、いろいろと相談に乗ってもらった。待っているだけでは何も起こらない。考えることは大切だが、それだけでは動きはない。その答えなどすぐには見つからないかもしれないけれど、この環境を活かした何かを発信して行きたいと思っている。

夏の夜に、こういった機会を得ることができ感謝である。
 
Eusebius Wirdeier/オイゼビウス・ヴィルドアイアー

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