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還流独歩

燃える東京と設備のデザイン その1 2011.08.14

東京に戻って来てから、どうしても冷房に頼らざるを得ない日が多かったが、ここ数日は湿度が少し下がったのか、日中は確かに暑いものの、昼間は冷房がなくてもどうにか耐えられるようになった。それでも気温が上がる午後には室温が34℃くらいになる。すべての窓を開け放つと、熱い風でも多少なりとも心地良く感じられるから不思議だ。それにしても都心は暑い。先日、自由が丘に行ったが、駅を降りたときの体感温度がまったく違っていた。明らかに数度は低いのがわかった。

ところで、最近「放射線計」と良く間違われる「放射温度計」で、室内の表面温度を測ってみた。確か昨年も同じようなことを書いたと思うのだが、少し詳しく書くと、ロールスクリーンを下ろした西日のあたる窓面は、だいたい35℃で、同じように日射があたるコンクリート屋根の天井内側は40℃近い。上階に居室がある天井は約31℃、北側の外壁は約32℃、他の内壁は約31℃である。冷静に考えるまでもなく、これだけ暑い壁に囲まれている空間に冷風を送り出しても涼しくなるわけがない。

実際、冷房の設定温度を最高の32℃にしていても、ずっと稼働している。室温が34℃から下がらないのだから当然だろう。もちろん、エアコンの能力が室容積に対して小さ過ぎるのが原因だが、風量を最大にすると、熱交換部分を通過する風速が速くて十分に冷えないのか、あるいは設定温度が高過ぎて、インバータが勝手に制御しているのか、吹出し口から出て来る風が微妙にぬるい。無駄な抵抗というのは、まさにこういうことなのだろう。だから昼間の冷房は止めることにした。

都心にある断熱材のない古いコンクリートの建物は、夏の暑さをさらに助長する「放射暖房空間」をつくりあげるのである。そして昼間は、冷房がなくてもどうにかしのげるが、問題は夜だ。夕方くらいから、昼間よりも少しだけ涼しい風を感じるものの、その風がそれほど強くは吹かない。東京湾までは少し距離があるにもかかわらず、日中は海風が卓越するようだが、日暮れとともに陸風になったとしても、高層の建物に阻まれてしまって弱まるのかもしれない。そして熱を蓄えたコンクリート壁からのなま暖かい熱放射が続く。

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