理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

木更津と軽井沢 その1 2011.09.22

子供の頃、何気なく見ていたテレビドラマの中で、そこに出て来る地名が気にはなるものの、どこにあるのかまでは調べないままであった地名がいくつもある。その中で、いまでも記憶に残っているのが「木更津」と「軽井沢」だ。テレビから「今週末、木更津のお姉さんのところに行くの…」。そんな会話が聞こえて来ても、その場所を突き止めたいとは小学生のときには思わなかった。ただ、木更津と軽井沢いう響きの良さだけは記憶に残った。

月日が流れ、その場所を初めて知ったのは、確か東京に出て来たときだったと思う。木更津が東京の隣りの千葉県にあり、軽井沢が標高の高い長野県にあるとわかったときは軽い衝撃を受けた。北海道の人にとって、避暑に軽井沢や那須に行くと言われても、北の大地そのものが涼しいから、避暑地というものが何だかよくわからない。軽井沢の場所を知るまで、私の中では、どこかの海辺にある町だと思っていたくらいだ。

東京や関東に住む人からは、失笑を受けるくらいの信じられない話だろう。中学生になると県庁所在地くらいは頭に入っていると思うが、それ以外の都市や町には関心が沸かないというのは普通だと思う。あるいは両親や祖父母が、内地(道外)の出身であれば、また違って来るに違いない。だから自分のことは棚に上げて失礼だが、「木更津」と「軽井沢」の位置を正確に把握している生粋の北海道人は、案外少ない可能性があることを指摘しておこう。

そういえば、北海道にバイクツーリングした人の実話で、あちこちで出会う小学生が「練馬」というナンバーを見て、「れんまってどこ〜?」と言われたという笑い話がある。あるいはその逆で、北海道に来た人が、オホーツク海に面した「斜里町(しゃりちょう)」の名前が思い出せず、苦し紛れに「斜めの里」と言うのを実際に聞いたこともある。どちらも何の罪もない。普段の生活で訪れることのないところの町の名前を読めないのはお互いさまだ。

« »