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木更津と軽井沢 その2 2011.09.23

もっとも、北海道にはアイヌ語を強引に漢字へ変換した地名が多いので、場所はともかく、読めないところがかなりあるのは致し方ない。留辺蘂(るべしべ)、興部(おこっぺ)、妹背牛(もせうし)などは、誰もが最初に聞いたときにしびれてしまう地名の代表格だろうか。他にも、占冠(しむかっぷ)、音更(おとふけ)、白糠(しらぬか)などは、かなりの人が知っているとは思うが、読み難いことは確かだ。ちなみにいま列記した町は、すべて漢字変換が可能である。

翻って、木更津も軽井沢も、高校の地理の授業のときには知っていたような記憶もないわけではないのだが、高校で習う地理では、日本国内よりも、むしろ海外の比重の方が高くなるので、全国的に知られている地名でも頭から欠落してしまうことは考えられる。先述のように、親戚などが遠くに住んでいれば、離れた土地であっても身近に感じたり、地名も覚えらられるのかもしれないが、そうでない場合は、特に意識をしないものなのであろう。

他にも例を挙げれば、先月訪れた「天売(てうり)・焼尻(やぎしり)島」は、北海道の人にとって、行ったことはなくても知らない人はいないが、この双子島のことを東京の友人たちに訊いてみたところ、ほとんどが聞いたことがないし、まったく知らないという反応が返って来た。このことと、自分が東京に来るまで知らなかった木更津と軽井沢とを比較することはできないけれど、知らないものは知らない。それだけのことである。

最後に、北海道生まれの私でも、初めて聞いたときに強烈な印象を残してくれた地名の一つを紹介したい。それは「ごきびる」だ。漢字では「濃昼」と書く。アイヌ語の「ゴキンビリ」が訛ったとのことだが、その響きはいままで聞いた中でも特に変則的で、まさに濃厚である。住んでいる方には申し訳ないが、読み方も当て字も刺激的過ぎる。現在は石狩市の北部に位置する厚田(あつた)区と浜益(はまます)区の両区にまたがっている現存する地名の一つだ。

日本にはいろいろな地名がある。響きの良いところもあれば、そうでないところもある。東京へ出て来たときに初めて聞いた地名に対して感じた正直な気持ちを、いずれまた書いてみたいと思っている。

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