理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

南米大賞受賞 その2 2011.09.28

今回、その中の一つが運良く選ばれた。予想外だったのは、トゥクマンという街で撮った「素朴な窓と自然採光」と名付けた何気ない一枚だったことである。見て頂ければわかるが、そのときにお世話になった友人宅の洗濯室の風景を写したものである。ただ、ガラスの使われ方としては多様だから、それが審査員の方々に好評だったということなのだと思う。他にも、モロッコで撮った「ガラス瓶で記念撮影」という一枚も入賞を頂いた。

話は逸れるが、ガラスはとても安定した物質で、百年単位でも物性的に変化したりすることが、ほとんどない。だから1000年以上も前に高級な装飾品として扱われていたであろう曲玉(まがたま)や、それに類するものが、発掘現場からいまでも出土することがあるのはそのためである。そしてガラスは割れやすいという極めて脆弱な性質を持っているが、その一方で、光を通すことができるという他の物質にはない類い稀な特徴がある。

普段、何気なく接しているガラスは、我々の生活に、もはや欠かせないものである。だから生活の中で重要な役割を担っていても、その有難さを見過ごしてしまうことが多い。例えば、建物や車、あるいは電車の窓がなくなることを想像できるだろうか。飲み物も、いまやペットボトルや缶が大半を占めているが、ガラス瓶には、それらでは代用できない役割があり、味わいと魅力も持っている。葡萄酒のほとんどが、ガラス瓶に入っていることを再認識したい。

建築の分野に目を向けると、ドイツでは断熱性を高めた窓ガラスが使われている。いまやガラスが三枚で、中空層が二つある三層の複合ガラスが一般的になりつつある。暖房主体の国だから、断熱を高めるという一方向的な進化で良いという面はあるものの、これはガラスの可能性をさらに引出すことにつながっている。日本の建築ガラスの断熱性能も上がって来ているが、開発の余地は、まだまだ残っていると思われる。

もはや、我々の生活に欠かせないガラスが、世界でどのように使われているかを楽しく見せてくれる「ガラスの世界地図」は、いまも投稿を受け付けているとのことなので、興味のある方は、是非、参加頂ければと思う。

« »