理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

3時間遅れの出発 その3 2011.10.04

このメニューを見ていて気がついたのは、日本語を起源とするもの以外は、すべてカタカナで書かれている。例外は「カツ丼」だが、これは「コトレッ(ト)」、あるいは「カツレツ」が訛ったものだと考えると、確かにカタカナの方が相応しい気もする。あとは「オクラ」は、「おくら」ではだめなのだろうか。「玉ねぎ」も「タマネギ」、あるいは「玉ネギ」と書いてはいけないのだろうか。そう言いつつも、実はどうでも良いと思っていたりする。失礼。

巨大なA380は、時折、軽微な揺れを起こしつつも、フランクフルト空港に無事到着した。出発が遅れても、こうして運んでくれるのだから実に有難いことである。ルフトハンザを贔屓(ひいき)にするつもりなどないが、欠航などに比べれば、数時間の遅れなど取るに足らないことであるというのは、乗り継ぎでやきもきしている人たちに対して失礼だろうか。西行きは時間がかかるが、少し持て余す時間があるところが意外と悪くないのである。

二回目の食事が運ばれて来た。自分で注文をしておいて実に失礼だが、初回と同様、これも微妙にもの足りなさがある。でも、菜食だから文句は言えない。よく見ると、果物に巻かれていたラップには座席番号が書かれている。その筆記を見ると、どう考えても日本の人が書いた文字とは思えない。先程、食事は日本で仕入れたものではないかと書いたが、おそらくドイツを発つときに往復分の食事を積んでいるのではないだろうか。

こういうことは、航空評論家の方に訊くと良くわかると思うのだが、あいにく、そんな人は知らないし、客室乗務員に、そこまで訊くほどの勇気などもない。食事を下げてもらうときに確認したが、主菜の上に貼られている表記はドイツ語だったから、これはやはり、往復の食事はドイツで搬入されたものではないかかと思われる。メニューの飲み物のところにも、ドイツビールと書かれているから、その可能性は高そうだ。

12時間近い飛行を終えて到着したフランクフルト空港は快晴だった。気温は26℃とのことで、搬入か何かのために開け放たれた最後部の扉からは、10月とは思えないような夏のような空気が入って来る。飛行機を降りると団体旅行と思われる人たちの大群が、これからの乗継ぎ便について添乗員から説明を受けているようであった。入国審査も終え、手荷物を受取りに行ったら、これもかなり待たされた。ファーストクラスのはすぐに出て来たが、そのあとが続かない。

乗る予定の電車の出発時刻まで、あと20分というところで荷物が出て来た。この状況だと、長距離新幹線駅で受取ることにしていたら、おそらく予定の電車には間に合わなかっただろう。成田空港の窓口の女性には我が侭を言って申し訳なかったが、やはり空港内で受取って、ドイツ鉄道の駅に行く方が正解だと再認識した次第である。この辺は、実際に体験してみないとわからないことなのだが…。

アムステルダム行きとケルン行きに別れて編成されたICE新幹線は、秋の夕日を浴びながらアウトバーン3号線の脇を高速で北上する。日曜ということも関係しているのか、AIRailに乗車している人はいつもの半分以下だろうか。途中で少しだけ見えるリンブルクの街が美しい。流れ行く秋の風景にしばし見入ってしまう。ちょうど夕暮れどきで、橙色から真っ赤に変化する太陽が地平線に沈むのが見え隠れする。

ケルンも暖かく、駅の中も大聖堂の周りも相変わらず人が多い。15分ほど待ってバスが来た。旧市街地を抜けるバスからは、カフェに溢れる人たちが見える。地下鉄工事のためにつくられた迂回路を二連結のバスは蛇行しながら抜けて行く。太陽が沈んだら、三日月が西の空に奇麗に浮かび上がって来た。静かな日曜の夜。明日の月曜は「ドイツ統一記念日」の祝日だから三連休である。そんな余裕が漂うケルンへの長旅が終わった。

加筆訂正:2011年12月1日(木)

« »