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還流独歩

モーゼル その2 2011.11.03

モーゼル川はドイツの西の端に位置しているから、ベルギー、ルクセンブルク、フランスにほど近いし、オランダもそう遠くはない。駐車場を見ても、ドイツ以外の車は簡単に見つかる。おそらくそういった近隣諸国では、「秋のモーゼル川観光」と銘打った日帰り旅行などを企画している会社も間違いなくあるのだろう。だから大型バスの数も多いし、それに乗ってやって来て、ワインを楽しむ人たちが実に多い。国を越えて気軽に遊びに来れるのは素敵なことだ。

「ベルンカステル・クース」を後にし、「Traben-Trarbach/トラーベン・トラールバッハ」という街を抜けて、「Zell/ツェル」という街の手前で給油する。昨日からすでに650kmを走っているが、給油量は42ℓだった。15.5km/ℓである。ディーゼルとはいえ、アウトバーンをかなりの速度で走っているにもかかわらず、なかなかの燃費である。最近のドイツ車のディーゼルは、本当に侮れない。

「ツェル」の美しい街並は、モーゼル川の対岸から見るとして、ここから「Marienburg/マリーエンブルク」という丘の上に建つ教会を目指す。ここは、U字型に大きく蛇行を続けるモーゼル川が、浸食の影響によって、左岸と右岸が最も近づく場所で、この高台に上ると、両側にモーゼル川が見渡せるのである。教会の付属の施設らしき「青少年研修所」もあり、季節の良い時期は食事も楽しめる場所なのだが、あいにく今年はもう閉まっていた。

そこから山道を抜けて、モーゼル川へ戻り、今日の最終目的地である「Cochem/コッヘム」へ向かう。お昼にカフェを訪れた「ベルンカステル・クース」がモーゼル川の西の玄関なら、このコッヘムはコブレンツに近い東の玄関ということになる。どちらも観光客が絶えないモーゼル川を代表する街だ。ここも駐車場を見つけるのに時間がかかってしまった。いつも車を停める川沿いは工事中のため、仕方なく500mほど離れたところまで行く。

まず目指すのは、険しい崖の上に建つ「Reichsburg/ライヒスブルク城」である。高さ的にはそれほどでもないが、それでも一番上まで行くには、やや辛いものがある。しかし、そこからの眺めは美しい。少し汗ばんだ身体を冷ましながら、しばしその景色を楽しむ。ここから街へ抜ける坂道の途中に、以前、何度も訪れたワイン屋さんがある。この城のすぐ下で葡萄を栽培していて、もちろんワインもつくっている。久しぶりに顔を出したら、まだ覚えてくれていた。

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