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第二回 北方型住宅賞に寄せて その1 2011.11.14

11月11日(金)の早朝に東京に着いたあと、夕方に「ソニーシティ大崎」で行なわれた見学会に参加する。外表面に手摺のように張り巡らされた陶器製の管に雨水を流して、建物の表面と周囲の温度を下げようとする面白い試みである。あいにく猛暑の夏は過ぎ、11月の雨が降る中での見学になってしまったものの、設計概要や建物の特徴の他、内部も屋上や免震装置なども視察することができ、有意義な時間となった。

昨日、13日(日)の午後の便で千歳に飛ぶ。今日、札幌市内で行なわれる「第2回 北方系住宅賞」の表彰式に出席するためである。朝の早い時間に市内に移動し、某喫茶店にていくつか作業を済ませる。人がいる少しざわついた空間の方が、作業がはかどる気がするのである。約3時間ほど、資料を作成したり、メールの返信を書き続ける。今回、日本にいるのは、わずか10日間だけだから、かなりの予定を詰めて入れているので、その調整が大変だ。

13時過ぎに会場へ向かう。受付には紅白の大きなリボンが置いてある。こんなのを胸につけるのは初めてではないだろうか。何だか気恥ずかしい。今回、東京からの往復の交通費も支給して頂けるということで、本当に有難いことだ。会場の後ろには、受賞した最優秀賞1作品、優秀賞3作品、奨励賞が6作品が掲げられている。すべてをゆっくり見たかったが、こういうときには意外と緊張するもので、他の方の作品を見ても、あまり頭に入って来ない。

先月、受賞の連絡を頂いてから、何度か連絡を取らせて頂いた窓口の方に挨拶を済ませ、少し話をさせてもらったった。そのあと前から二列目の席に着く。建築主と、お世話になった建設会社の社長と横並びだ。受賞関係者は30名弱で、主催関係者が20名ほどだろうか。会場は大きくはないが、授賞式という華やかな雰囲気は十分にある。それにしても、こういった準備などは大変ではないかと、着席しながら余計なことを考えた。

北海道建築指導センターの理事長の挨拶に始まり、経過報告、表彰状授与、審査委員長からの講評、お祝いの言葉が続き、約1時間程度で閉会となった。表彰状授与では、透明のガラスの中に板を埋込んだ重くて立派な表彰盾を頂いた。失礼な言い方だが、紙の表彰状だとばかり思っていたから、あまりに予想外だった。しかも建築主には副賞として10万円が送られた。最優秀賞は30万円で、奨励賞は5万円である。私の手元には入らないが、実に名誉なことである。

表彰式を終えた後、最優秀賞を受賞した方との座談会が開かれた。折角の機会なので、傍聴させてもらうことにした。聞いて感じたことは、実に単純なのだが、建築主も設計者も、どのように住まうのかを真剣に議論し、それが次第に昇華した結果が、今回、最優秀賞を受賞した住まいであることがよくわかった。基本設計に半年近くを費やしたというが、その大半が、図面なしで行なう会話や雑談だったそうだ。それを設計者は噛み砕いて建築へと翻訳したのだ。

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