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還流独歩

人生の岐路 その3 2011.11.21

学生時代から彼女のことをそれなりに知っている私は、この話を聞いたとき、なぜに大阪なのかという疑問符が頭の中で激しく点滅した。「大阪なんて絶対にイヤ。そんなところに住むなんてあり得ない」と断言しそうに思ったのだが、彼女なりにいろいろと想い出してみると、これまでの人生の中で、関西方面の人に助けられることが多かったという。

そういった背景が、今回の大阪行きを決断させた一面があるのと同時に、秋になって敷き詰められた落葉を見たとき、子供の健康に対する不安が一気に増大したらしい。そして大阪へ行ってみて、子供を外で自由に遊ばせることができるという開放感を得たことも大きかったようだ。いつの間にか健康への不安が鬱積していたのだろう。

私にはその気持ちが良くわかる。東京といえども、もはや安全だとは言い切れない。郷里の北海道だって同じだ。多くの問題に直面している人たちには実に申し訳ないのだが、ドイツへ来ると、不安から解き放たれた喜びさえ感じてしまう。だから、彼女が大阪へ行ったときに、私と同じ感情が沸いて来たことは何ら不思議ではない。

いま普段の生活において、敏感な人はさらに注意深くなり、そうでない人はより気にしなくなるという二極化が起きているように思う。ただ、いずれにしろ、誰もが無意識のうちに精神的な抑圧を受けている可能性は大いにあるはずだ。何にも増して、特に小さな子供がいる人の中には、もどかしさを感じつつ、何もできない状況の人が多いに違いない。

友人家族の今回の決断は、いろいろな要因が関係しているようだから、私が何か余計な詮索することなど無用なのだが、その決断を心から応援したいと思うし、今月末には大阪で新たな生活を始めるというから、ともかく健康に気をつけて、いままでとは違う環境を逆に楽しみながら、充実した日々が送れることを祈るばかりだ。

そしていつか大阪に行ったときには遠慮なくお邪魔して、関西での生活について、いろいろと聞かせてもらおう。その日が来ることを楽しみにしている。

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