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風邪気味デンハーグ その4 2011.12.14

木版画以外のリトグラフの作品も秀逸である。そして時代を追うにつれて、微妙な笑いを誘う作品が登場し始める。同じ構図の中で、魚と鳥が変化する作品はあまりにも有名だ。その応用編として、描写が最後には藁帽子をかぶった典型的な東洋人になるのもある。そういった作品のすべてが、どこか幾何学的でありながら、でもその枠だけでは納まり切れないものばかりなのだ。

それ以外にも、数多くの作品が展示されおり、どれを見ても楽しめる。また3階には錯覚を体験できる場所も設けられているのが良い。この博物館はエッシャーに関心がない人でも飽きることはないだろうし、気軽に芸術に触れることができるから、もしオランダに行く機会があれば、この博物館をを訪れるためだけにデンハーグに立寄るのも決して悪くないだろう。

そのあと、インドネシアかベトナム料理の店で遅めの昼ご飯を食べる。壁に書かれた三つのメニューから一つを選ぶと、まずは大皿の真ん中にご飯を乗せてくれる。次に目の前に置いてある肉や野菜といった総菜をそれぞれ二種類選んで、全部で4つのおかずの盛り合わせができる。それを電子レンジに入れて温めて出すという仕組みだ。5分ほどして若い男性が持って来てくれた。味は微妙な部分もあるが、軽く食べるには十分だ。

身体が温まったところで、お店を出て、近くの食料品店で買物をしてから、一旦、友人宅に戻る。そして最後に、ゴミ出しを30分ほど手伝う。デンハーグ中央駅の出発まで1時間を切ったので、忘れ物がないか確認し、別れを簡単に済ませて友人宅を出る。長居は無用だ。次回、会うのはどこだろうか。外へ出ると、あたりはもう暗くなっている。5分ほどしたら市電が来た。

新しい車両は、車内で切符が買えるということなので、現金を握り締めて券売機に行くと、どこを探しても小銭を入れるところ見つからない。切符の取出し口には「おつり」と出ているから、小銭が使えそうなのだが、どこを探しても投入口はなく、チップが埋込まれたカードでしか買えないようだ。仕方なく、近くに座っていた若い男性に尋ねてみる。

切符が買えるカードを持っていたら、現金を渡す代わりに買ってもらおうと思ったのだが、どうも上手く行かない。別の男性が、銀行のカードでも大丈夫かもしれないと言いつつ試してくれたが、それも受け付けない。自分のドイツの銀行のカードも試しに入れてみたが、これも無反応だ。仕方ないので、2.50ユーロを握りしめたまま乗り続けることにした。

検札が来たら理由を話そう。でも多分来ないと思いつつ、10分ほど落ち着かない時間が過ぎた。そして中央駅のホームに下りても切符の確認など一切なかった。いわゆる無賃乗車に成功した。見つかったら、徹底抗戦をしようと英語で理由をどう話すかという準備を頭の中でしていたが、何ごともなく乗換えすることができた。

ウトレヒト行きの特急の一番前の車両に乗る。電車は何の前触れもなく静かに発車した。乗っているのは私も含めて3人だけである。一つだけ驚いたのは、車内で無料のWLANが使えることだ。車両の外側にそんなような絵が書いてあった。もしかしたら、デンハーグ行き特急でも使えたのかもしれないが、気がつかなかった。

ウトレヒトでフランクフルト行きの新幹線に乗り換える。時刻表のところには、14番線に入る予定が15番線に変更になったと表示されている。ホームで待っていると構内放送があり、15番線が14番線になると言う。同じホームなので、待っている人たちが14番線側に移動した。でも新幹線は15番線に入って来た。そういうこともあるだろう。それほど気にすることではない。

席は8割近く埋まっていたが、窓の位置と座席の配列の関係で、外の景色が見えない窓と窓の間の席が空いていたので、そこに座る。ここからケルンまでは、約2時間だ。ICE新幹線はデュッセルドルフまで定刻通りだったが、ケルンの手前で急停車し、結局15分ほど遅れて着いた。座席に置いてある時刻表を見ると、ケルンでは20分近い停車時間がある。こんな遅れも通常の運行に折り込み済みなのだろう。

駅前のバス停に行くと、ケルン市交通局の男性が来て、バスは駅の反対側から出ると言う。毎度、こういう仕打ちに打ちのめされつつも、気を取り直して、今度は市電で帰ることにする。そういえば行きに気持が動転して、投函し忘れた郵便が鞄の中に入ったままだったから、ちょうど良いだろう。デンハーグの友人宅を出てから4時間半の移動が終わった。

わずか一日半の小旅行だったが、 久しぶりにオランダの空気も吸えたし、友人が引越す前にデンハーグにも行けて、とても良い気分転換になった。風邪の状態も少し良くなって来たので、これで今週も乗り切ろう。ともかく長文にお付き合い頂き感謝申し上げます。
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