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辛口ドイツワイン 2012.01.08

世の中には、たくさんの情報が溢れているというのに、ドイツワインのほとんどが甘口だと勘違いしている人がいまだに大勢いるというのは実に残念なことだ。日本から来た方が、お土産に甘いワインを買いたいと言うのを聞くと、もはや残念というより、少なからず怒りさえ感じるのである。

日本語で「貴腐ワイン」と呼ばれる「Eiswein/アイスヴァイン」は、確かにドイツの名産に位置づけられていることは間違いないが、それは希少価値が高いからであって、ドイツの人がこぞって飲むものでは決してないと断言できる。ましてや、甘いドイツワインを喜んで飲むドイツ人を私はこれまで一度も見かけたことがない。

ワイン通の人の中には、ドイツでいう辛口の白ワインが、他の国の白に比べると甘過ぎて飲めたものではないと仰る向きもあるようだ。その意見は正しいと思う。フランスやイタリア、あるいはスペインといった葡萄酒大国で生産される超辛口の白ワインと比較されると、ドイツの白は勝てないし、甘さが残っているのは否めない。

しかし、辛口で美味しいドイツワインは無数にある。日本には、いつの間にかドイツの甘いワインだけが輸入されて来た背景があるから、知られていないというより、根強い先入観が植え付けられているのだろう。もはや偏見と言っても過言ではないし、ドイツの甘いワインは一体誰がいつ飲むのだろうかという疑問さえも私は持っている。

いや、その疑問も私の先入観ではあるのだが、甘いワインを飲むとすれば食後しかあり得ないだろう。でもやはり、食後に甘い白ワインを飲む光景は想像できないのだ。むしろあり得るとすれば、イタリアの「Grappa/グラッパ」や、ギリシャの「Ouzo/ウーゾ」といった強めの蒸留酒を飲むのが一般的だといえる。

私はドイツの甘い白ワインが不味いと言っているのではない。それを飲んで、ドイツのワイン文化を誤解して欲しくないだけなのだ。そして、ドイツの白ワインの大半は辛口であるということを、ここで声を大にして訴えたいのである。それらは、他国の白とは比較できないかもしれないが、決して侮れないことも付け加えておきたい。

どうか皆さまが、美味しいドイツの白ワインと出会えますように…。

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