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還流独歩

電熱マット 2012.01.13

毎年のごとく事務所が寒いので、数年前に買った電気ストーブに引き続き、電熱マットなるものを購入した。40cm角くらいで、表面はカーペットのような生地でできている。暖かさは強弱の二段切換えが可能で、強のときの消費電力は約30Wだ。価格は1,680円だから、決して高くはない。製造している会社の方には失礼だが、中身はただの電熱線だし、あとは、どのように仕上げるかが問題だから、特に難しい技術は要らないとはいえ、この程度の額で買えてしまうのは、申しわけないような気もする。

最初は足を乗せていたが、それほど温かくもないので、椅子に置いてお尻に敷いたてみた。あたり前かもしれないが、この方が遥かに温かい。暖房便座と並んで、局所暖房の極めつけのようなものと侮ってはいけないことがわかった。お尻を直接温めるというのは、身体全体が温かくする効果がとても大きい気がするのである。電車の座席暖房だと、心地良い揺れとともに眠くなってしまうことが多いが、電熱マットでは眠気は襲って来ない。幸か不幸か、室温が極めて低いからだろう。足下に置いた300Wの電気ストーブと一緒に使っている。

その他に、エアコンも併用しているから、暖房器具は全部で3台使っていることになるが、エアコンにはできるだけ頼らないようにしている。というのは、設定温度に近づくと、消費電力を抑えるために吹き出し温度が下がってしまうかららだ。最初、20℃に設定すると、しばらくして暖かい風が出て来るが、室温が20℃に近づくと涼しい風が出て来るのだ。だから設定温度を22℃に上げる。するとまた暖かい風が出るものの、すぐに同じ状況になるので、少し暖まったら、設定温度を18℃くらいに落して、エアコンをほとんど稼働しない状態にさせた方が、不快感が抑えられる。

それにしても、日本の冷暖房というのは、対処療法になってしまうものなのだと改めて思う。夏の暑さをどのようにしのぐかを考えて建てられてきたけれども、もはや冬の暖房が不要だというような住宅などあり得ないし、むしろ冷房よりも暖房の方が化石燃料の消費が大きい状況になっているのではないかと思う。その理由は、一般家庭において、冷房するには電気しかないからだ。一方、暖房は電気に加えて、ガスや灯油を使うことが可能である。いつだったか触れたが、鹿児島県でさえも、冷房より暖房に使用する化石燃料の方が大きいという調査結果が出ている。

毎年、この時期になると、暖房について考えてしまうのだが、何の解決策も出せないまま、いつの間にか春になってしまうのである。いま、進み始めた新しい設計物件では、どういった方法で快適な温熱環境を実現しようか、予算と照らし合わせて、悩みに悩む状況になりそうなことを、電熱マットの温もりを感じながら考えてしまうのである。

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