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還流独歩

暖房の方法 その1 2012.01.18

夏の暑さから逃れるために、家の中の温度を効果的に下げようとすると、どうしても冷房設備に頼らざるを得ない。例えば、強い西日を防ぐために日よけを設けたり、風の通りを良くして通風効果を利用する方法などもあるが、それらは空気そのものを冷やすのではなく、体感温度を下げることが中心となるため、冷房装置のように室温を大きく下げることはできない。そもそも、空気を冷やすことができるようになったのは、電力という化石燃料の消費を前提とした技術が開発されてからの話である。

一方、暖房となると、その方法はたくさんある。太古の昔から、人間は火を扱って来たから、最も単純な暖房といえば、火を使うことである。室温を大きく上げる効果は期待できないが、例えば、火鉢や囲炉裏などは、「採暖」と呼ばれる暖房の一つであろう。あるいは最近では、薪ストーブやペレットを使う事例も増えて来ているから、これはもはや採暖とは呼べないかもしれないし、他にも数は多くはないかもしれないが、暖炉もその中の一つに挙げられるはずだ。

火を使わない採暖の代表格となると、やはり火燵(こたつ)だろうか。あいにく郷里の北海道では見かけないが、関東以西では、いまも使われているのではないかと思う。その他にも電気ストーブや、電気ファンヒーターなど、電源さえあればどこでも手軽に暖かさが得られる器具も採暖の一つだし、電気マットや電気カーペット、電気毛布、電気あんかなども同じ部類に入るだろう。これらは、専門用語でいうところの局所式暖房だといえる。

いまここで書いて来た暖房方法は、「火」や「電力」を使ったものだが、暖かさを得るには、「ガス」や「灯油」を使う方法も欠かすことができない。ガスを使った暖房器具といえば、そのまま燃焼させて暖かさを得る「ガスストーブ」や「ガスファンヒーター」であろう。では、「ガスエアコン」はないかというと、「ガスヒートポンプ」という手法がある。これは冷暖房が可能だが、設備的に大規模になるため、大きな建物に使われている場合がほとんどである。

それからいまも根強く使われているのが、「石油ストーブ」ではないだろうか。寒冷地では、外部に大型の灯油タンクを設置し、そこから配管を通じて灯油を供給する方法が一般的だが、東京などでは、石油ストーブ自体にタンクがある簡易式のものが多く使われているはずだ。またガスと同様に、燃焼によって温められた空気を供給することで暖房する「石油ファンヒーター」という機器もある。冷房と違って、暖房する方法というのは実に多種多様であることがわかる。

そういえば、いまは使われなくなったが、石炭ストーブというのもある。その昔、北海道ではさかんに使われていた。 戸建て住宅の暖房といえば、石炭だったのではないだろうか。小学校の教室には大型の石炭ストーブが置かれていたし、お風呂を沸かすのにも石炭や薪を使っていた記憶がある。おそらく40年ほど前の1970(昭和45)年頃までは、北海道では、暖房に石炭を使うというのは、ごく普通のことだったのではないだろうか。

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