理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

暖房の方法 その4 2012.01.21

冬でも必要な空気温度というのは、20℃よりも少しだけ高ければ十分だろう。我々に必要な温度というのは、それほど高くはない。だからこそ、暖房とは、どうあるべきなのだろうか。あるいは、温水をつくることも同じかもしれない。50℃のお湯を得るのに、電気で水を昇温させるという方法が果たして良いのだろうか。従量料金の安い深夜電力を使った温水器はすでに広く普及しているし、火を使わないから安全ではある。

しかし、ガスや灯油を使う場合も同じだ。温水や20℃といった温度を得るのに、1,500℃という燃焼温度が必要なのかとさえ思う。エクセルギーの視点から言えば、化石燃料という質の高いエネルギーを熱として利用する過程には、大きなエクセルギー消費が伴うことになるのだが、その損失とも思える消費がなければ、温水というものがつくり出せないのだ。資源を投入と消費とは、そういった関係で成り立っている。

いまドイツでは、太陽光発電と並んで、太陽熱の利用が急速に進んでいる。もちろん太陽は毎日照っているわけでないから、他の熱源との併用が必要になるが、日射から得た熱で、50℃の温水や、20℃の室温をつくり出すというのは、化石燃料の消費を抑えることができる理想的な技術ではないかと思う。特に日本では、毎日入浴する習慣があるから、太陽熱を利用した温水器というのは、もっと普及しても良いのではないだろうか。それを暖房にも使えたら素晴らしい。

そういった技術は、ドイツでは、かなり普及し始めている。ただ、暖房が中心のドイツだからできることであって、冷房も必要な日本で、暖房用の温水配管を別に設置するかというと、一般の住宅では費用の面も含めて難しい面が大きいのではないだろうか。可能性があるとすれば、北海道や東北地方の物件なら取り組む意義は十分にあるだろう。大きな放熱器から得られる柔らかな暖房は、冬の生活を豊かにしてくれることは確かである。

しかし、それが果たして暖房方法として最も優れているかというと、どうなのだろうか。放射式の暖房は、温風を吹き出す対流式よりも気流による不快感は小さく、断熱と気密が良ければ、部屋の中を均一に温める効果を持っている。しかし、設置が可能なら、薪ストーブの魅力も捨て難い。部屋を20℃程度に温めるのに、1,500℃の燃焼温度が必要なのかどうかという自問自答をしたが、「火」という局所的な高熱源から得られる心地良さもあるはずだ。

あるいは、石油ストーブだって捨てがたい。煙突から出て行く煙をブロックの中を通すことで蓄熱暖房を行なう「ペチカ」というのも、さかんに用いられたことがあった。決して悪い暖房方法ではないと思う。石油ストーブ一台で家全体が温まるのであれば、化石燃料をそのまま燃やす石油ストーブは、いまも選択肢の一つに十分なり得るのではないかと思う。一つだけ問題なのは、煙突が必要だということだろうか。

« »