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歩行者への配慮と反応 その1 2012.01.26

ドイツの街の中を歩いているときに、とても気持が良いと感じることがある。それは、横断歩道に立っているときや、信号のない交差点を渡ろうとするときに、車が必ず止ってくれることだ。ハンドルから手を離して「お先にどうぞ」と示してくれる人も実に多い。子供を連れて歩いている家族や、歩くのが遅い高齢者の方に道を譲ることが基本であり、そういった人たちへの運転者の配慮というものが極めて徹底している。おそらくこれは、ドイツに限ったことではなく、欧州の国、全般にあてはまることなのではないだろうか。

だから私も車を借りて街中を運転をするときは、歩行者を最優先するようにしている。特にケルン市内の幅の狭い通りで、道を渡りかけようとしている人を見かけたら、止って道を譲ろう。そして、そのときの歩行者の反応が実に面白い。笑顔で返してくれたり、頭を上下に振る人が多いだろうか。あるいは片目を軽くつぶってウインクを仕返して来る人もいるし、人差し指を顔のあたりまで掲げて御礼を示す人を見かけたこともある。「ダンケ」と口にして渡る人の声は聞こえないけれど、短いことばだから、口の動きですぐ分かる。しかもしっかりと目を合わせて来る。

伸ばした人差し指と中指を目尻にあてて、軽い敬礼のような大袈裟な仕草を仕返して来きたりする人や、親指を立てて見せる人もいる。お年寄りなどは、車が止ることがあたり前だと思っているのか、止った車には何の反応も示さず、ひたすら道の反対側を見ながらゆっくりと渡るのを見かけたりすると、思わず笑いがこみ上げる。ドイツで車を運転する人の歩行者への気配りを見ると、大人としての余裕だけでなく、格好良さも感じられるのだ。ドイツの人の運転は荒いことも多いけれど、道はしっかり譲ってくれる。交通法規だから、当然なのだが、実に律儀である。そんなことが、日常生活の中に少なからず潤いを与えてくれる気がする。
 
加筆訂正:2012年4月14日(土)

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