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歩行者への配慮と反応 その2 2012.01.27

日本に帰って来て、同じような状況になったとき、私もつい同じように、人差し指を軽く掲げて御礼の意思表示をしてしまう。日本の人は、軽く会釈したり頭を下げる人が多いから、私の御礼の仕方は気障(キザ)に思われるかもしれないが、何だか自然とそうなってしまうのだ。しかもこういうとき、ドイツの人なら、必ず目を合わせるのだが、日本にいるときは、不思議とそれができないものである。道を渡るときに少し恥ずかしい気持を持ちながら、御礼の仕草を示したりしている。そんな風に感じるのなら、別にしなければ良いのだが、御礼を示されて嫌な人はいないだろう。

日本では、横断歩道に立っていても、止ってくれる車は少ない。高速道路のサービスエリアに行けば、身障者用の専用駐車場に、普通の車が平気で停まっていたりもする。免許証の更新のときには、制限速度の遵守や、交通事故の悲惨さ、「ないだろう運転」ではなく「かもしれない運転」が事故を未然に防ぐということなどを丁寧に教示してくれるが、歩行者や、交通社会の中で弱い立場にある人に対して、最優先の配慮を行なうことの大切さについても、もっと伝えるべきではないかと思う。

制限速度の超過や、駐車禁止の取り締まりも必要かもしれない。でも、運転する側と歩行者の双方にとって、互いに気持の余裕が生まれるような仕組みづくりが事故を減らして行くことにつながるのではないだろうか。道を譲った側と譲られた側のコミュニケーションなど、取るに足らないことかもしれない。ただ、ドイツの街を歩いているときに感じられる車と歩行者間の互いの心遣いを体験すると、実に清々しい気持になる。そして、大袈裟に聞こえるかもしれないが、そういった思いやりが大人の社会をつくり上げて行くのではないだろうか。

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