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還流独歩

雨樋再考 その2 2012.02.03

その一方で、雨樋があるために、排水設備が別途必要になってくる。雨を敷地の外に適切に流すためには、地面の中に配管を埋めて、道路の排水本管に接続しなければならない。あるいは宅地内排水する場合でも、雨樋のあるところは、その数だけ浸透枡が必要になる。雨水と汚水を合流させて排水できる地域だと、それほど問題はないのかもしれないが、設備というのは不思議なもので、ある一つのものを設けると、それに付随した別のものが必要になって来る。エアコンの室内機と室外機という関係を例に出すと短絡的に聞こえるかもしれないが、要は、そんな感じだろうか。

東京のような密集地では、雨水を下水に接続しないと、雨が少し強く降っただけで、敷地内は雨水で溢れてしまう可能性は高いし、隣地に流れ込んでしまうところも多いだろう。特に傾斜地などでは、雨水を適切に排水しないと地盤が崩れる恐れも出て来るから、雨樋を通じて、雨水を流し去ることはとても重要なことだ。その反面、目の前に降って来る雨は見えても、屋根に降った雨水は、人目に触れることなく雨樋から下水ヘと流れて行く。いまや、それがあたり前であり、雨水は目の前から早くなくなって欲しい存在になってしまったのだろうか。

屋根からの雨だれを見たいというわけではないのだが、特に雨が少ない年に渇水が問題になると、雨樋から勝手に流れて行ってしまう雨水の存在が、とても気になってしまう。普段は遠い水源の水量などを気にかけることもなく、水道水を使い、そして雨水を下水に流しておきながら、一旦、渇水が始まると、その水位を心配するというのは、自分も含めて、実に我が侭なことなのではないかと思えて来る。雨樋という、一見、地味な存在にも思える雨水排水設備を見直すことで、普段は気にも留めないようなことが見えて来たりするかもしれないと感じるのである。

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