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還流独歩

笑顔の力 その2 2012.02.07

何度かのやり取りを通じてわかったことは、安い色刷りの場合、希望する色をデータ上でいくら指定しても、実際の仕上がりの段階では、その色を忠実に再現することができないということだった。しかも紙質によっても色の出具合が大きく異なることもわかった。それで、色にこだわるのは諦めた。ただ、この店で注文するのは嫌になったので、同じ印刷会社の別の店舗に行くことにした。歩くと20分くらいだから、それほど遠くはないが、面倒ではあった。

そこへ行き、これまでの印刷の経緯と私の要望を少し説明した。この店舗の方は親切で、もしかしたら、データの変更処理という作業を行なえば、希望する色に近づけられるかもしれないと教えてくれた。ただし、追加料金が必要になるのだが、その金額はわずか500円である。試しに色の指定をして、100枚注文してみたら、いままでで一番奇麗な色になって印刷されてきた。そこですぐに200枚を追加注文した。それもほぼ希望通りの仕上がりだった。あの悩みは一体なんだったのだろう。

それ以来、名刺の印刷はそこでお願いしていたのだが、昨年の夏に行ってみると店舗がなかった。インターネットで調べてみたら、どうやらそこは閉鎖してしまったらしい。徐々に減りつつある名刺を見ながら、追加の印刷をどうするか考えた。例の苦手な女性がいる店舗へ久しぶりに行ってみるか…。また同じ人が出て来たらどうしようか…。心揺れる私。そんなところへ「名刺の印刷賜ります」というチラシが郵便受けに入っているのを見つけた。

その印刷会社は、本当にすぐ近くだし、道路脇には「名刺印刷」と書かれた看板が置かれているので、直接訪問して訊いてみようかとずっと思っていた。でも、ガラスに視線防止用のシートのようなものが貼ってあるので、中の様子がよく見えず、何だか入りづらい雰囲気がある。インターネットで調べてみたら、無料の電話があるというので、まずは、そこにかけてみた。何度か呼び出し音が鳴ったあと、女性が出た。会社名を言う声が何となくぞんざいに聞こえた。

私はお願いしたい名刺の印刷について冷静に話した。でも、返って来る返事が、何だかとても冷たく聞こえるのだ。丁寧さがないというか、忙しいのだから早く電話を切りたいような、そんな感じを受けてしまう。向こうの状況はわからないけれど、作業中の画面に向かいながら、私の電話に応対しているようにも聞こえるし、声に妙な苛(いら)つき感も含まれている気がする。電話というのは恐ろしいもので、声だけでも相手の雰囲気がわかってしまうものなのだ。

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