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還流独歩

笑顔の力 その6 2012.02.11

数日後、名刺を受け取りに行くと、いままで同じように、奇麗な状態で仕上がっていた。料金を支払い、領収書を出してもらう。私は最後に「またお願いしますね」と言って出口に向かった。そのときの彼女は少しはにかんだような笑顔を見せた。私はその女性のことがやけに気になっているわけではなく、どうしても以前の女性と比較してしまうこともあって、今日は御礼の一言を言い残しておきたかっただけなのだ。だけど、そんな自分がとても面倒臭い人間に感じられてしまったりもする。

人間というのは不思議なもので、相手によって、自分の態度が大きく変わってしまうことが良くある。それは社内での上下関係や、会う相手との身分の違いといったことが関係することも多いけれど、それも含めて、気持が落ち着く相手と、そうでない人がいたりする。自分が素直になって、相手のことも大切に考えられるときもあれば、なぜかそうはならないときもたくさんあったりする。誰にも苦手な相手というものがあるようだ。

そういったことは、会う頻度とか、長さによって変わって来るかというと、そうでもないことが大半ではないかと思う。あまり会いたくない人といると、気持が萎縮してしまい、本当の自分が出せなくなってしまうのかもしれない。それがまた逆に相手に伝わってしまい、負の連鎖が続いて行く可能性もある。会っていて気持が良い人といると、そのまた逆で、素の自分が出せるし、それを受け入れてくれるから、また気分が楽になるのだろうか。

名刺の注文の話で、こんなに長く書くことになろうとは自分でもまったく思いもよらなかった。よほど根に持っているのだと思われてしまいそうだが、そんなことは決してない。何度も書いたが、こういったことは、むしろ自分自身に返って来ることが多いものだ。まさに、「人の振り見て…」だと思う。ただ、それが良い方向に作用しているかというと自分でもあまり自信がないことも確かだ。人との付き合いというのは難しいものである。

今回も長々と書き綴ってしまったたけれど、これは自分への手紙でもある。この文章が、人にどのように受け止められるかわからないから、こんなことを書くのは良くないのかもしれないと、何度も思ったけれど、吉田さんが指摘することは極めて正しいし、自分もできる限り心掛けて行きたいと思っている。そして、確かに語学の上達も大切なことではあるが、笑顔というのは、それ以上の何かをもたらしてくれることが大いにあるはずだ。ことばは通じなくても、笑顔は心を通わせる力を持っていると思うのである。

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