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還流独歩

保温の効果 その3 2012.02.15

実際に家の中に入ってみて感じることは、この測定結果が示しているように、上下階で温度差がまったくないということである。測定しているときには、0.5℃から1.0℃程度の差があったものの、少し時間を置くと測定器が安定して来るのか、0.1℃の差もないときが何度もあった。暖房設備は1階の食卓と居間の壁に設置した1kWの温水暖房器が2台あるだけだから、105㎡の家を2000Wで温めていることになる。つまり暖房負荷は、1平米当たり20Wである。ただ、日中は暖房を止めていることも多いらしいので、実際にはもう少し低くなると思われる。

ドイツのパッシブハウスや、それに準ずる住宅では、暖房と給湯、それに換気を含めた単位面積あたりの年間のエネルギー消費量を、約15kWとしているから、それには遠く及ばないと思う。でも、家全体が暖かく、それに包まれる心地良さというものを改めて体験してみると、本当に必要な温熱環境というものが何であるかが身を以て良くわかる。玄関や、その脇の物置は温度が低いが、家の中に寒いところがないというのは何とも言えない実に快適な空間なのだ。

30年ほど前だろうか。北海道の住宅に吹抜けがあると寒い家になるということは、半ば常識化していたと記憶している。本来なら、吹抜けがある豊かな空間を持つ住宅を、どのように温めるかを議論すべきなのだが、そういったことには触れられて来なかった気がするのである。今回、食卓と居間の上部に大胆な吹抜けを設け、上下階が一体となるような配慮をしつつ、しかも2kWだけの暖房設備で家全体を温めるというのは、正直なところ、かなりの冒険ではあった。

他にも一般的な住宅では見かけない大開口部からの熱損失も気になった。熱貫流率が1.2W/㎡Kという値のアルゴンガス入りLow-E複層ガラスだが、高さがあるために、冷気が床面に下りて来ることが懸念されたから、竣工時と同じように今回も試しに窓の下で寝そべってみたが、冷気を感じるようなことはまったく感じなかった。窓下に暖房器をもう一台設置しようかとも思ったが、なくて良かったのだと思う。

問題は窓面の下部に結露が見られることである。竣工して初めての冬ということもあって、おそらく住宅内部からの放湿が関係しているのだろう。また、換気が不足しているのか、外気を多めに取り入れると結露は改善されるようだ。今回は1階の天井も木構造が見える現しだし、壁もほたての貝殻を使った塗り壁だから、内表面のほどんどが呼吸をする自然素材に囲まれていると言っても良い。そのせいなのか、空気が奇麗に感じられるのだ。しかも嫌な臭いがまったくしないというのも、特筆すべきことの一つだろう。

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