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還流独歩

礼状と日曜の雨 2012.03.04

昼前までは少し日が射すような天候だったが、午後から雨になった。ドイツに限らず、欧州は、1月下旬から2月上旬にかけて寒波に見舞われ、ケルンも最低気温が氷点下15℃を下回る日が一週間ほど続いたようだが、ケルンに戻って来た2月中旬過ぎには、最高気温が10℃を超える日が多くなった。最近は外に出ても、それほど寒くないし、厚着をして出かけると、逆に暑いくらいに感じられる。3月に入り、日の出が急速に早くなり、日の入もかなり遅くなったことがわかる。

雨が振る日曜の午後、ようやく礼状を書き始める。ここ一週間ほど、ずっと胸につかえていた作業なのだが、取りかかるまでに、どうしても時間が必要だった。先日の視察でお世話になったドイツの方に送る手紙は、出力して読み返すたびに気になる点が出て来て、何度も校正し直してしまう。ドイツの人に宛てる手紙は相手にもよるが、基本は要件を先に書くということだ。前書きなど要らない。そしてこういった文章は流れが大切である。

御礼、丁寧な対応に対する感謝、印象と感想、日本の状況との比較、将来への展開、再会を楽しみにしている、といった内容にするため、何度も書き直した。そんなことを気にせず、そのまま出しても良いのかもしれないが、自分が納得のいかない文章のまま投函することはできない。わずか3通を書き終えるのに、3時間以上もかかった。今回は、それだけ丁寧な対応を頂いたからだ。表面的な礼状にはしたくない。

窓に当る雨が静かに流れて行く。窓を開けると春の薫りが感じられる。少し一息入れてから、ドイツだけでなく、日本でもお世話になった方々にも簡単な挨拶状を書く。こちらは手書きだ。相変わらずの乱文に嫌気がさす。もう少し丁寧に書くことを心掛けるべきなのだが、送りたい相手がたくさんいると、どうしても気が焦ってしまって、読む方には失礼な字体になってしまう。雨が上がりかけた夕方、ドイツ国内宛も含めて12通を投函した。

今日は、それだけで一日が過ぎて行った。雨の音を聞きながら、手紙を書くというのも悪くない気がするのである。いや、自分とも向き合う実に有難い時間なのかもしれない。

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