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還流独歩

文章表現 2012.03.06

約3週間ほど、環流独歩の更新を滞らせてしまった。少し大袈裟に聞こえてしまうかもしれないが、書くことを一旦止めてしまうと、なぜか不思議なもので、自らの思考が停止してしまうような気がするのである。しかも、自分と向き合う時間がなくなるというか、気持に余裕がなくなるというか、何だかそんな感じになってしまう。もっとも、更新できていないことが気になりつつ、時間だけが過ぎて行くので、それが精神的な抑圧になってしまうという逆の面もあるのだが、短時間で構わないから、一日に一度は思考を文字にするという時間を持ちたいと思う。

そんなことを考えていたら、以前紹介した吉田社長が、365日語録で、次のようなメールを送って来てくれた。「言葉の力とは意思の力であり、意思の力とは自己確信の力である」。言葉を発し続けることで、それが自己確信へとつながるということなのだろう。なかなか含蓄のある意味深いことばではないだろうか。話すことがそれにつながるかどうかわからないけれど、文字にして自己を表現するということは、自分と対峙することに他ならない。書くことによって、自分が何を考えているのかが明確になる。

ドイツに来た頃は、自分の意見などまったく持っていなかった。こういった場で、普段、考えていることを自分のことばで表現できるようになったのは、本当に最近のことである。それはドイツという国を通じて、いろいろなことを学ばせてもらったからに他ならない。日本を出るときは、自分に自信がなかった。それはいまもさほど変わらないけれど、日本とドイツを比較することで、それまで気がつかなかったことが、新たに見えて来た面も多々あることは確かである。そして、機会あるごとに文字にしてきたことも大きいかもしれない。

以前にも書いたが、自分が考えていることを文章にして表現することは、実は設計という作業と極めて似ているのかもしれないと思うようになった。もちろん、すべてが同じではないのだろうけれども、試行錯誤の中で繰り広げられる削ぎ落しというものが、建築をつくりあげることと類似しているように感じられたりするのである。だから、これからもできるだけ書き続けたいと思っている。

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