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還流独歩

直感力 2012.03.10

一年前の今日、私は筑波にいた。某企業の研究所に呼んで頂き、社内勉強会のような場所で、ドイツの建築について話をさせて頂いた。施設を案内してもらったあと、都内に移動し、夕食をご一緒させてもらった。その翌日に起きることを予感するわけもなかった。そして、それからもう一年が過ぎた。この週末は、誰もが一年前に起きた出来事を振り返ることになるのだろう。

私は地震を体験しないままドイツへ発ってしまったという経緯があるので、いまでも何だか言いようのないわだかまりを感じている。そんなことを気にする必要はないのかもしれないが、どこかしら心の片隅に、罪悪感にも似たような何か変な気持が残ったままなのだ。そして、被災された方々に対して、何もしないままの一年が流れてしまった。

そしてこの一年、日本は、いままで陰に隠れていた社会的な負の面が、地震をきっかけにあぶり出されて来たように思う。ここでは、あまり直接的には意見を述べてこなかったが、母校の研究室の情報網を通じて、さまざまな議論を、静かにだが、熱く交わして来た。

その中で考えたことは、ここに何度も書いたように、自分で考えて判断することの大切さである。いや、多くの方が、自らの判断基準で、いろいろなことを決めているとは思う。でもそれが、何か緊急を要するときに選択を迫られたら、自分を含めてどう動くだろうか。

人間には、それまでの経験を通じて得た直感というものが備わっている。何かが起きたとき、その感覚が瞬時の行動を呼び覚ますことがあるはずだ。これからどんなことが起きるかわからないけれども、固定観念にとらわれず、自分の頭で考えて、そして直感を大切にしつつ、行動を起こす勇気を持っていたいと、いつも思うのである。

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