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還流独歩

会社開放日とガラス建築 2012.04.21

この週末の土曜日、ケルンに住む友人が勤める会社が創立50周年を迎えるということで、「会社開放日」なるものが開催された。歩いて20分ほどのところにあるので、作業を終えてから16時くらいに行ってみた。さほど期待はしていなかったが、予想以上にも多くの人が来ている。あたり前のことだと思うが、家族連れも非常に多かった。私が着いたときには、アトリウムにある大きな舞台で、インド舞踊らしき踊りが披露されていた。

その会社の建物は、外から見ればガラス張りの四角い建物だが、ドイツ人の設計らしく、かなり緻密な配慮がなされていることがわかる。大雑把なつくりのところも多いが、よく考えられている部分も多々あって、デザイン的にも非常に良くまとまっていると思う。細かなことを追求するのではなく、大きな視点で奇麗に仕上げられているとでも言った方が良いのかもしれない。

ドイツの他の建物と同様、光を取り入れるために、中央に大きな吹抜けがあり、そこから射込む昼光のお陰で、内部が極めて明るい。太陽の光というのは、人工照明にもまさる効果を持っていることが良くわかる。何度も書いたけれど、人工照明で仕事をすることがあたり前なのではなく、自然の光に包まれて執務することが豊かなのだ。この建物は、それを教えてくれている。

その一方で、外壁も内壁も、ほぼガラスのみで覆われているから、会社の中は、どこから見ても素通しに近い。この会社に勤めるもう一人の友人は、ここで仕事を始めたとき、中庭を挟んで反対側にいる同僚たち50人くらいの動きがすべて見えることに大きな不安を覚えたという。相手が見えるということは、自分も見られているからだ。つまり隠れるところがないのである。それが気になって仕方がなかったらしいが、それでもいまは、かなり慣れたようだ。

外から見ても、反対側の通りが見えてしまうほどのガラス建築というのは、一体、どうなのかという疑問を抱えつつも、これだけ光がふんだんに入る建物というのは、執務をしていて気持が良いのではないかと思うのである。

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