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還流独歩

修道院と友人の個展 その2 2012.04.23

それぞれの写真について説明を受け、多くを話をしていると、1時間という時間が瞬く間に過ぎて行った。車で連れて来てくれた友人が、午後に約束があるというので、ケルンへ戻ることにする。短い時間だったが、何故だか心が洗われたような、少し清々しい気持になった。

少し起伏のある丘陵地帯に来て、春の陽射しを浴び、そして芸術に触れると、月並みな表現だけれども、心が豊かになるのを感じる。いや、素直になるとでも言い換えた方が良いのかもしれない。でも、この気持は、一体、どこからやって来るのだろうか。

日本は、決して貧しい国ではない。世界でも有数の経済大国である。その将来に、陰が差し込んで来ているのも事実だが、ものには溢れていても、本当の豊かさというものを感じないような気もするのである。それは私だけでなく、多くの人が同じように思っているかもしれない。

以前から、何度も書いているように、たくさんは要らない時代に入って来ているようにも思う。あってもなくても良いものは潔く捨てて、そして本当に必要なものは何かが、いまこそ問われているような気がするのである。そんなことを感じるのは私だけだろうか。

形あるものだけが、自分を幸せにしてくれるわけではない。目に見えない何かであっても、それは豊かさを感じる特別な何かになり得ることもあるだろう。所有することは決して悪いわけではないし、それも極めて大切だとは思うけれど、その背後には、目に見えない貴重な価値観というものが隠れている気がするのである。

友人の個展を見たら、そんなことに想いを巡らせてしまった。

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