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還流独歩

東京建築案内 その2 2012.05.19

GYRE、DIOR、TOD’Sを立て続けに訪れる。スイスとドイツからの建築家だというと、どの店舗でも好意的に受け止めてくれるので有難い。職業病とでも言うのか、彼らは、ファサードの納まりや、内部空間の仕上がりなどを詳しく見ている。建築に携わっていると、どうやら、そうなってしまうようだ。

彼らの反応で面白かったことを、そのまま書いたとしても、おそらく問題が発生する可能性は低いと思われるが、建築業界は狭いから、それに配慮して、やや遠回しな表現をすれば、通りを挟んだ反対側にある著名な商業施設に対しては、彼らはまったく反応しなかった。むしろ、ほんの一部だけ残された同潤会住宅の方が遥かに素敵だと言う。

そして、いくつかの商業建築を見終わってから、スイス人の建築家は、おもむろに質問して来た。「日本の建築家は、建物で消費されるエネルギーについて関心はないのか? 例えば、外側に日よけとかは付けないのか? 日本は電力不足だと聞いているのだが…」。答えに窮してしまう、とても良い質問である。私は次のように答えた(と思う)。

「いま見て来た建物は商業建築だから、いわゆる省エネルギーについては、十分な配慮がなされているとはいえない面があることは確かだろう。日本は、スイスやドイツのように暖房主体ではなく、冷房も必要だから、一般的な建物における室内の温熱環境は、機械的設備に頼らざるを得ないことが多く、また、それで十分だと考えられる傾向はあるように思う」。

とても言い訳けがましい答えを返したあと、私はさらに苦しい補足をした。「冷房負荷を低減させるためには、外側に日よけを設けた方が良いことは確かだ。でも、日本は雨も多いし、台風もやって来る。汚れや耐候性、また安全性といった面に対し、総合的な配慮を行こなおうとすると、費用がかかるから、そういった建築的設備は敬遠されることになる」。

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