理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

東京建築案内 その5 2012.05.22

そして話は大きく戻って、彼らから受けた質問について再考してみる。お昼ご飯を食べながら、あるいはカフェで一休みしているときに、いろいろな話をした。日本の建築設計に関すること、経済の状況、休暇日数など、難しくはないものの、なかなか簡単には答えられない質問だ。私の意見がすべてではないが、でも、答えないわけにはいかない。

そんな彼らとの会話を振り返ると、建築環境学を学んだ者の一人として、建物で消費されるエネルギーに対する日本の建築家の視点はどうなのかと、2回も問い詰められたことが気にかかる。それはもちろん、私にも突きつけられた問題だから、誰かに責任を転嫁するつもりなどない。人間というのは、誰かから質問されて、初めて真剣に考えたりするものだ。

建物の外壁には、室内の温熱環境を適度に調整できる何がしかの建築的な機能を持たせたいと私も思っている。でも、また言い訳になってしまうが、多くの設計において、例えば、外付けの日よけを設けたくても、それを実現できる予算がないのだ。他の何かを削ってでも良いから、そちらにお金を回したいと思っても、難しい現実が立ちはだかる。

今年も暑い夏がやって来るはずだ。できれば猛暑は避けて欲しいけれど、多くの建物では、冷房を使わないわけにはいかないだろう。その一方で電力供給不足が叫ばれ、関西では、節電をしなければ、あたかも停電するかのような脅迫まがいの脅しがまかり通っている。いや、もちろん節電はすべきだ。でも、何かが違う気がする。

電力の安定供給を任された独占企業が、自分の都合だけで、電気料金を値上げしたり、供給が不足する恐れがあるというようなことを言って良いものだろうか。この話をし始めると、言いたいことが、修復できないくらい脱線してしまうので止めるが、電力会社に対して多くの人が、心の奥底で理不尽な疑問を感じているに違いない。

« »