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還流独歩

東京建築案内 その7 2012.05.24

東京建築案内という標題で書いておきながら、今回も話は大きく逸れてしまい、内容も段々と熱くなって来てしまった。でも、普段から私も同じように抱いている疑問を、いとも簡単に、しかもあっさりとした質問に言い換えて、日本の建築が抱える問題に対し深く切り込んで来た彼の思考は、決してないがしろにできないし、見過ごすべきではないとと思う。

スイスには、「ミニマム」と「エネルギー」という二つのことばを合わせた「ミネルギー」という政策があるし、ドイツにも、「EnEV(エネフ)」と呼ばれる省エネルギー法があって、その基準を年々厳しくすることで、建物で消費されるエネルギー量を徐々に減らして行こうという明確な方針が定められている。一方、日本の次世代省エネルギー基準は、13年前の平成11年に策定されたまま改訂されていない。日本には日本のやり方があるが、これで良いのだろうか。

日本はドイツやスイスとは気候が異なる。南北に長いし、北海道と沖縄におけるその差は余りにも大きい。北海道は暖房が主体だけれども、東北から関東以西は冷房が必要になる。いや、冷房装置からの冷風が嫌いという人も多いから、エアコンが絶対になくてはならないかというと、そこまでは言い切れないかもしれないけれど、大規模な建築においては、冷房なしというのは考えられないだろう。

自分の意見は棚に上げてしまって恐縮なのだが、日本の建築はどこへ向かおうとしているのだろうか。それは建物の種類によって大きく異なるとは思うが、これからの住宅はどうあるべきなのだろう。全室空調と言われるような24時間換気なのか、日本独特の蒸暑地域に相応しいパッシブ建築なのか、Q1住宅が良いのか、あるいはパッシブハウスなのか、ゼロエネルギー住宅か、はたまたプラスエネルギー住宅か、いや、そのどれでもないのか。

では、事務所建築は、何を目標にすべきなのだろう。省エネが目標と言われて、もう30年以上は経ったと思う。でも、夏の冷房需要は下がるどころか、横ばいか微増に近い状況ではなかろうか。省エネ対策をしているから、この程度の増加で済んでいるのかどうかも私にわからない。CASBEEを取得すべきなのか、であれば、Sなのか、Aで良いのか。建築を専門としているのに、恥ずかしながら、明確にできないことが多過ぎる。

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