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還流独歩

東京建築案内 その8 2012.05.25

ということで、このあたりでまとめようと思ったのだが、話が散漫になりつつある。

ともかく、そんな疑問を抱きつつも、建築は次から次へと建てられて行く。時間という戻れない制約があるから、問題を解決できないまま設計を進めなければならないときもあるし、深く踏み込んで検討できるときもある。建築主の立場になって考えれば、どの物件にも同じ比重をかけなければならないのだが、求められている内容によっても、その時間配分は大きく異なって来たりもする。

それにしても、いつも思うことは、建築というのは本当に多様だと思う。この世には、まったく同じ建築というものがないと言っても良いのではないだろうか。いや、似たような建築はたくさんあるかもしれない。例えば、一時期に何棟も建てられる建売り住宅のようなものであれば、互いに酷似する家なども存在するが、世界中を見渡しても、同じ土地というのは一つもない。すべての建築が、違う土地に建てられ、建物に対する要望も千差万別だ。

エネルギー消費を抑えるという観点から、その多様な建築に対して、ある基準を策定し、それに準拠する対策を求めることは、決して間違ってはいないと思う。ただ、一つ言えることは、ドイツのように暖房主体の国と、冷房も必要な蒸蒸暑(じょうしょ)地域では、温熱環境のあり方も大きく違うのではないかと思う。誤解のないように補足すると、ドイツでも大きな建築では、主に放射式の冷暖房方法が採用されているから、ドイツの建築には冷房がまったくないというわけではない。ただ、住宅には冷房は一切ない。

日本の電力需要の変遷を見ると、年を追うごとに、季節による変動が激しいことがわかる。これについては、いずれまた触れたいと思うが、やはり、この大きな変化を抑えるような方向が望ましいはずだ。冷房は、どうしても電力に頼らざるを得ない面があるから、夏の最大需要が注目されるが、供給不足に陥るのは恐れがあるのは、本当にわずか数日に過ぎない。それを抑えるにはどうしたら良いのだろうか。冷房を無理に使わないのではなく、使わなくても良い環境が得られる建築が必要なのではないか。

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