理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

米と麦と食べること その3 2012.07.10

長年、会社に勤めた方が、退職を機に農業を始めるという話が、雑誌や他の媒体などでもよく取り上げられている。私の身の回りには、そんな人はいないけれど、食べるものを自らつくるということへ、大いなる関心を寄せる人の気持は良く理解できるし、そんなこだわりを持って農業に取り組んでいる人への憧れも、実は大いにあったりする。

こんなことを書いて本当に失礼な話なのだが、第三次産業の極みのような職業を選んでしまった私は、以前から、日本の第一次産業の将来を危惧している。そして「食」に触れるとき、米でも、野菜でも、果物でも、とにかく、食べるものをつくっている人たちに対する尊敬の気持が、心の中の大きな部分を占めるようになってさえいる。

お金を払って、食べるものを買う。あるいは食事を戴くことが、どんなにか貴重なことで、有難いことか。コンビニエンスストア並べられているおにぎりを私も買うことが多いけれど、1個が100円から150円である。そのおにぎりだって、誰かが米をつくってくれたからだ。そして多くの手間と、化石燃料を消費して、運搬されてきたものである。

この話をすると、「イワシ」の例えを想い出す。海にいるイワシに餌を上げた人はいない。つまり原料費は発生しない。でも、魚屋さんに置いてあるイワシには値段がついている。なぜか。イワシは誰からも餌をもらわず、タダで育つけれど、魚屋さんに並ぶイワシには、それを獲りに行く漁師さんの人件費や運送費、諸経費が含まれているからだ。

« »