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還流独歩

実弟上京 その2 2012.07.19

地下鉄の途中の駅で別れる。兄弟というのは、不思議なもので、気がつけば、いつの間にか普通に存在する相手である。だから、いてあたり前という感覚だろうか。ただ、我々の場合は、互いに離れて暮らしているし、もう頻繁に顔を合わせるような環境ではなくなってはいるから、身内なのに、遠くの存在のような気もする。

そういえば、子供の頃は、よく兄弟喧嘩をした。その原因が何だったかなど、もう忘れてしまったが、確か一度、車の後部席の右か左のどちらか座るかで揉めて、父にひどく叱られたことがあった。確か小学生のときだったと思う。いまにして思えば実に馬鹿らしいことなのだが、兄弟喧嘩とは、大抵、そんな他愛もないことが発端である。

弟は15歳で実家を出た。私が郷里を離れたのは20歳頃だったから、一人暮らしを始めたのは、彼の方が数年早い。だから、一緒に暮らした期間というのは、彼が生まれてから15年でしかない。でも、互いに記憶に残っている時間は、実際にはもっと少ないだろう。10年にも満たないように思う。

もはや、実家を離れて住んでいる時間の方が、遥かに長くなった。気がつけば、互いに離れて、もう30年近い。驚くべき長さである。でも会えば、そんな長さはまったく感じない。旧友というと照れ臭いが、そんな感じなのかもしれないとさえ思うようになった。そして、彼には彼の家族があり、私には私の環境がある。

世の中には、社会人になっても両親や家族と一緒に生活をしている人がたくさんいる。それに対してとやかく言うつもりなど毛頭ない。それはそれで楽しくもあり、大変な面もあるに違いない。そんな形態は家族の数だけ存在しているのだろう。今日、会って話した時間は短かったけれど、彼と地下鉄の駅で別れてから、そんなことを考えた。

多忙な毎日が続いているようだから、涼しい北海道とはいえ、身体に気をつけて欲しいと思う。そして、また会える機会を楽しみにしています。

兄拝

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