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還流独歩

束の間の北海道 2012.08.13

一昨日の土曜の夜、帰省のため、羽田空港から千歳へ向かった。ちょうどお盆の時期に北海道に向かうというのは本当に久しぶりである。羽田空港は混雑しているかと思ったら、それほどでもない。ただ、飛行機は満席である。定刻よりも10分ほど遅れて駐機場を離れた飛行機は、滑走路の手前で離陸をかなり待たされ、千歳には30分近く遅れて着いた。この程度の遅延など気にするほどのことでもないけれど、夜10時を回っていたから、足早に空港をあとにする人も多かったようだ。

昨日の日曜は、午前中に親戚家族を顔を出し、総勢、10名で納骨堂へ行き、お参りをし、その他にも墓参りを二つ済ませた。いずれも遠くはないのだが、車で移動し、ついでに買物したりすると、あっという間に時間は過ぎてしまう。「田舎に帰ったらゆっくりしてきて下さい」とお気遣いのことばを頂くことも多いが、私の場合、のんびり過ごしたことはあまりないような気もする。もはや自分の居場所もないから、何となく落ち着かないし、かといって、北海道の自然を満喫しようという気にもならない。実にもったいないと思う。

墓参りを済ませた日曜の夕方は、ジンギスカンで締めることになった。親戚が集まる夏の好例の行事のようなものである。夕方前から炭をおこして、順次、飲み物の用意をする。全員が集まる前に勝手に乾杯を始めたりするのも無礼講だ。それにしても、ジンギスカンというのは北海道の味覚の代名詞とまで言っても良いくらいである。今日は、道路を挟んだお宅と、裏庭の向こうのお宅でも、同じように人が集まっていて、その煙の出方を見る限り、間違いなくジンギスカンを焼いていると思われる。気がつけば日が暮れていた。時折吹く風が心地良い。

2月に大雪が降って、汗だくで雪かきをしてから半年が過ぎた。そしてまた、お盆を過ぎると秋風が吹き始める。北の大地のわずかな夏が過ぎて行く。この時期の北海道は、本当に気持が良いのだが、何だか一瞬、虚しさのようなものを感じたりしてしまうときがある。北海道で生まれ育ったのに、いまは離れて生活していることに対する微妙な葛藤のようなものが、ふと自分の中で沸き起こるからなのかもしれない。でも、身体のどこかに、いまも北海道が確実に染み付いている。それが何なのかはわからないけれど、郷里の風景を見ると、そんなことを考えてしまうのである。

素晴らしき北海道に感謝である。

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