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なんもさ文化 その1 2012.12.27

よく取り沙汰されることだが、日本にある47の都道府県ごとに、それぞれ県民性というものがあるらしい。昔は「お国柄」と言っていたようだし、いまもその名残は確実にあると思う。

先日、帰郷したときに「北海道人」「気質」というような文で検索してみたら、次のような情報が出て来た。北海道人には次のような二つの特徴があるという。一つは「インデネカ文明」で、もう一つは「シャーナイズム」らしい。「インデネカ」の方は「詰めの甘さ」であり、「シャーナイ」の方は「諦めの早さ」」だそうだ。初めて聞いたが、確かにそんな一面はあるかと思う。これらを良い方に受取れば、どちらも「寛容」や「許容」「おおらかさ」を示していると思われるし、そのまま否定的に捉えれば、「いい加減」であり、「浅はか」となるのであろうか。

そう言いつつも、北海道にもいろいろな人がいるから、すべての人がこれにあてはまるわけではない。ただ、親戚や知人などを見渡してみると、確かに的を得ている気もするし、あるいは「しきたり」とか「順番」いったことにも、こだわらない人が多いかもしれない。そんなことに固執していたら、昔は厳しい冬を越せないかったということも少しは関係しているのだろうか。雪が降る前に、終わらせなければいけないことも多かっただろうから、物事の順序をわきまえずに生きるしかなかったとも言える。それは悪く言えば、「大雑把」ということにもつながりそうだ。

そして、北の大地に住む人の特徴について触れるとき、「なんもさ」という表現を抜きには語れないように思う。あるいは「なんもなんも」というもの使われる。説明するまでもなく、「ありがとう」という御礼に対する返事だ。「たいしたことないよ」「何も気にすることではない」。もっと砕けた表現を使うと「こったらこと何でもねえ」という意味である。私は北海道を離れて長いから、普段は耳にすることはないが、いまも頻繁に使われている北海道弁の一つであろう。ひらがなにして、わずか4文字の中に、どこかしら優しさが詰まっているように聞こえはしないだろうか。

さらに調べてみたら、北海道特有の文法があることもわかった。その例が「書かさらない」「開かさらない」といった表現である。例を挙げると「このボールペン、書かさらない」、「この瓶の蓋、固くて開かさんない」となるだろうか。他にも「この石、動かさらない」などのように、「…さらない」というのは、自分の意思ではどうすることもできず、しかもそれは誰の責任でもないという意味も込められているという。これらも、厳しい気候風土の中で生き抜いて来た人たちの、ある意味、おおらかさが影響しているのだろうか。
 
加筆訂正:2013年1月6日(日)

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