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文優さんのこと その1 2012.12.29

今年の年末に思うこと。

櫻井文優(さくらいぶんゆう)さんに出会ったのは、確か12-13年前の2000年くらいのことだったと思う。某大学の先生から紹介されたのがきっかけだった。何かの用事でケルンからミュンヘンに出かけたときに、そこで初めてお会いした。その当時、ドイツでの生活に翻弄されていた私だったが、それとは対照的に、彼は大きな目標を持ち、活き活きとしていた。

それから間もなくして、彼は長い闘病生活を送ることになる。頭部にできた腫瘍の治療のため、アメリカのボストンへ行くことになったという連絡が来たのは、出会った2000年の師走か、その翌年だったと思う。彼はミュンヘン工科大学の博士課程に席を置きながら、時折、日本とドイツを往復する精力的な生活を続けていた矢先のことである。

それからしばらくして、たまに会ったときも元気そうにしていたし、治療は順調に進んでいるものと私は勝手に解釈をしていた。その一方で、容態は好転してはいないというようなことも知人からは聞いてはいた。大丈夫なのか心配だったが、本人に訊くのも何だか失礼に思えたし、いずれにしろ私にはどうすることもできなかった。

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