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還流独歩

深夜の足場設置 その2 2013.01.07

そのまま帰るわけにはいかない。この寒空の中、ほとんど人も通らないようなところで誘導しているその警備員に向かって、こんな時間に足場を組んでいるのかと訪ねた。厚手の防寒着で顔を半分近く隠した初老の男性は、すまなさそうに肯定した。なんでも平日にはできない作業で、朝5時くらいまでに終わらせなければならないらしい。それ以外のことはわからないという。

足場を組む音が結構響くのと、日曜の深夜にこんな作業をするのは、いかがなものかと言うと、すぐに現場監督に来てもらいますと言う。寒いので断ったが、すぐ近くにいるからというので待つことにした。責任者は1分とかからずに来た。某大手建設会社のその方には、金属音が意外と響くこと、作業する時間帯として、やや常識を外れているのではないかということを淡々と伝えた。できるだけ音が出ないようにしますと言われたが、それは無理なことはわかっている。

こういった苦情にも似たことを言ったことは、ほとんどない。でも、今日の状況では、どうしてこんな時間に作業をしているのかを訊いてみたくなったのだ。にもかかわらず、現場監督と話しているうちに、何だか申し訳ない気持ちも沸いて来て、結局、何の工事なのかを聞き漏らしてしまった。その後、騒音は多少静まったような気もしつつ、いつの間にか寝てしまったようだ。それにしても、深夜に足場を組まなければならないとは、大変な作業である。

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