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還流独歩

出発進行 その1 2013.02.22

電車に乗っていると、運転士が運行の確認のため、声を出しているのを聞くことがよくある。単純に「出発進行」だったり、「信号よし」だったりする。たまに、とても渋い声の人がいたり、あるいは、何もそこまで大きな声を出さなくてもよいと思える人もいる。しかも、運転席に二人いる場合は、輪唱のように声を出すので、反復するときなど、自然と笑いがこみ上げてきてしまったりして、自分でも可笑しくなる。

安全に運転してくれるのだから、別に何も失礼なことを言うことはないのだが、いつだったか、ドイツから来た人と電車に乗っていたとき、運転席から聞こえて来る唸り声について訊かれたことがあった。そのときの運転士は、声が特に低く、日本語であっても、一体何を言っているのか、日本人の私にさえわからない感じだったのだが、そのとき以来、この「声出し確認」が、とても気になるようになってしまった。

そして、そのドイツ人への説明として、運転士は、発車時や、信号が青かどうかを確認する意味で声を出してしているのだと伝えた。それに対する反応は冷ややかに感じられた。いや、私の勘違いなのかもしれないが、その彼の顔には、「出発するかどうかなど、運転士が自ら決めて発進するのだし、信号が赤か青は見ればわかるのだから、わざわざ声を上げる必要はあるのか…」、とでも言いたげな表情が表れていた気がするのである。

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