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還流独歩

建て方開始 その2 2013.03.02

昨年の夏、珍しく必死になって図面を描いた。構造事務所とも何度も打合せを行なった鉄骨階段も、問題なく、どうにかうまく納まったようだ。いまでこそCADを使っているが、二次元の紙に描いた設計図から、こうして三次元の建物ができ上がって行く光景を前にすると、小さい建物だけれど、これが建築の醍醐味といえるものなのだろうかと改めて自分に問いかけてみる。いや、それよりも、建築に携わっている一人の人間として、大きな責任の方を強く感じる気がするのである。

よく言われるように、実際に建物が建ったときには、ことばでは表すことのできない感動があるという話を聞く。でも、それは本当なのだろうか。いや、その気持を理解できないわけではないし、むしろ共感も覚える。ましてや、竣工したときの達成感とか満足感は、確かに何にも代え難いとも思う。ただ、個人的には安堵感の方が強いかもしれない。それと同時に、竣工してからの使われ方の方が気になったりする。

別に捻くれた見方をするつもりはないのだが、うまくまとめられなかった箇所のことに思いを巡らせてしまったりもする。重要な確認事項は、もちろん建築主からの了承を得るし、大きな変更などもつねに確認を取ることはもちろんだが、意外と気になる点は、建築主に知らせる必要のない本当に軽微なことだったり、あるいは、それを伝えたとしても、まったく問題にならないようなことだったりもする。

でき上がって行く鉄骨を見ながら、そんなことを考えた。

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