理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

2階は1階 その3 2013.03.16

また、ドイツの集合住宅には地下室がある。大抵は地下1階だが、大型の建物になると、地下が2層に分かれていることもある。この仮定には、やや無理があるかもしれないが、一階には店舗が入り、地下があり、しかも建物の階数が4層や5層になると、地上階を基準として、そこから一つ上が1階、一つ下がると、地下1階というように、地上を0階として扱うのが便利だったと考えられなくもない。

実際、ドイツで生活していると、上下に複数に分かれている建物の断面案内図に「Ebene/エーベネ」と出ているのを見かけることがある。「Ebene」とは、いわゆる「積層」のことで、「レイヤー」と言った方がわかりやすいだろうか。その図に「Ebene 0」と出ている階が基準階となり、そこから一つ下の階は「Ebene -1」、そこから3階上がったところは「Ebene 3」などと書かれている。これが多用されている建物としては、高層の駐車場を挙げることができるだろうか。

例えば、階が上下に分かれている少々複雑な建物や場所で街合わせをする場合、どの階で会うのかを決める際に、基準階よりも一つ下の階のときは、「マイナス1」を示す「Minus Eins/ミノス・アインツ」とか、二つ上の階であれば、「プラス2」である「Plus2/プルス・ツヴァイ」というように言ったりする。頻繁に使うわけではないが、このようにして間違いを防ぐことはよくある。もちろん、日本でも同じではあるが、プラスとかマイナスという表現をつかうことはないだろう。

そう考えると、基準階を「0」と表現することが、それほど奇異に感じられなくなる。数直線上を考えてみても、「0」が存在しているからこそ、負と正のように分けられる。これがもし、「-2」「-1」ときて、次に「1」「2」と続くと違和感があるのは、単なる慣れのせいだろうか。もっとも、「0」という概念の歴史は古いらしいし、それについて考え始めると切りがないので、深く追求することは止めておくが、上下の階の表現に「0」を用いるのは、あながち不思議ではないのかもしれない。

« »