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還流独歩

愛用の文房具 その1 2013.05.05

最近のことなのだが、20年近く使っている愛用のシャープペンシルが、いつの間にかなくなってしまった。同じく15年ほどの付き合いになる革の筆入れに入れて、いつも持ち歩いていたのだが、いつの間にか、どこにも見当たらなくなってしまった。上着の内ポケットに入れたままになっているのではないかと思い、思い当たる何着かを探してみたが、やはり出て来ない。机の上に何枚も重なっている書類の間も探したが見つからない。何度もなくしかけては、その度に出て来てくれたのに、今回は、どうも無理なようだ。

誰にでもあてはまるかどうかわからないが、長年、使っているものが手元からなくなると、妙に落ち着かないということがあると思う。私にとって、その一つが、そのシャープペンシルだ。芯の太さが0.9mmだから、普通の人は滅多に手にしないのかもしれないが、その太さにもかかわらず、書きやすく、また簡単な絵を描くにも重宝する一本であった。いつ、どこで買ったのか、いまになってはまったく思い出せないが、手元から消えてしまったのは実に悲しいことである。代用になるものは、あいにく持ちえていない。

ついにしびれを切らして、銀座にある有名文具店に足を運んだ。言うまでもなく伊東屋である。ここになら、あるかもしれないと思ったからだ。でも、もしなかったら、その代わりとなる一本をどれにするか決めかねて、結局、買わないかもしれないという一抹の不安もあった。そして、無数にシャープペンシルが並ぶ棚の前に来た。あいにく、先客の女性が一人立っていて、製図用と書かれたところがよく見えない。しばらくして、その人がいなくなったあと、0.9mmのところを探した。でも、愛用のシャープペンシルらしきものは見当たらない。

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