師走に再び その3 2013.12.20
しかし、この効果もあってか、理解不能言語による両脇からの挟み撃ち攻撃は次第に減り、それまで通路を挟んだ左の超長髪の男性と、右隣りの優しそうな男の人との間に入り込む隙間をつくることができなかった私は、座席周辺の音響環境を劇的に改善することに成功したのである。
話は変わって、配膳のときに「赤ワイン、白ワインはいかがですか」とやって来た客室乗務員に、「白ワインをお願いします」と言って、プラスチックのコップを差し出したら、キャップが開いていなかった。しかも目の前に注がれたワインは赤だった。彼女は。「今日の私ってどうしたのかしら…」という行き場のない困惑した表情を浮かべながら、数秒の間、遠くを見つめたのを私は見逃さなかった。
そして私に誤ることもなく、「取りあえず、赤を入れておきますね。白は、またあとで頼んで下さい。」と言って、目一杯まで赤ワインを注いだあと、後方へと消えて行った。日本の客室乗務員なら、「お客さま、大変に失礼致しました。いますぐお持ちします…」というようなことを言うだろう。その対応の違いが笑えたりもする。
仕方がないので、しばらくしてから別の女性に白ワインを頼んだら、「承知致しました。ただ、飲み物は、後方に用意してありますから、いつでも大丈夫ですよ。私はこれからお手洗いの状況を確認しに行きますので、少しお待ち下さい。」といって立ち去ったあと、数分くらいして、持って来てくれた。もう50代後半に見える彼女の対応は実に大人である。
そして機内の照明が消されたあと、しばらくしてから、先程の客室乗務員が、飲み物と一緒に、「オニギリ、オア、ケーク?」と言いながら配り始めた。彼女が通路を挟んだ反対側の男性に勧めたとき、私の中で大爆笑が起きた。女性の客室乗務員が、その彼に「Which language do you speak?」尋ねるのだが、彼はまったく反応を示さない。そうしたら、その乗務員が一言、言い放った。「OK, you speak NO language !」。
その投げかけに対し、男性は何も言わず、おにぎりを手にしたことも、私の笑いをさらに助長させた。英語が話せないことが、そんなに恥ずかしいことだとは思わないけれど、彼らのように、英語に対する語彙がまったくなく、問いかけにも反応しない状況だと、互いの意思を確認するのは実に難しい状況になる。
掲載日:2014年8月20日(水)